ワークショップを改善させる省察の方法

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ワークショップを無事に終えたとき、その時点で満足していませんか?ワークショップの振り返りをすることで、自身の知識や経験が蓄積され、質の高いワークショップを実践できるようになります。本記事では、ワークショップを省察するための方法を解説します。

ワークショップとは

ワークショップとは、参加者が参加・体験を通じて学び合い、新たな価値を創造するための実践の場です。

ワークショップの基礎については、別記事で詳しく解説しています。

省察とは

省察はリフレクションとも言われますが、辞書では「自分自身を省みて、その良し悪しを考えること。」と記載されており、類語として振り返りや反省が挙げられます。ワークショップにおける省察は、ワークショップの企画立案から、実施したプログラム内容とその成果などを省みることです。そして、それぞれの省察において、要因を抽出・構造化して考えた上で、文章や絵にまとめて形式知化します。こうした工程を踏んだ省察は、知識となり、次のワークショップに活かせるのです。

ワークショップの企画立案については別記事で詳しく解説しています。

省察の種類とやり方

省察には外から得る省察と、自分で考える省察の2種類があります。どちらかを選択するのではなく、必ず2種類の省察を実施しましょう。

外から得る省察

外から得る省察の代表例がアンケートです。ワークショップに合わせてアンケートを作るようにしてください。筆者が一般的なワークショップで用いるアンケート項目はこちらです。

 Q1.  本日のワークショップの満足度を教えてください。
 Q2.  ワークショップで得られた学びを教えてください。
 Q3.  ワークショップの感想を教えてください。
 Q4.  事務局への要望があれば教えてください。

Q1の満足度は点数で表現してもらい、定量データとして集計できるようにします。それ以外を記述式にすることで、定性的なデータも取るようにしています。これをMicrosoft Formsや紙(A5)で印刷することで、参加者の負荷にならないアンケートを作ることができます。

自分で考える省察

自分で考える省察にはさまざまな手段がありますが、本記事では2つの省察の仕方を紹介します。

1. 分析シートによる省察

分析シートはプログラムデザインで意図していたことが、参加者にどのように受け止められていたのかを検証し、改善点を考えるためのものです。

分析シートは「1. プログラム名」「 2. 参加者の反応」「 3. 意図・目的」「 4. 課題」「 5. 改善策」を順番に言語化することで、精度の高い省察ができるようになります。分析では積極的に付箋紙を使いましょう。数色の付箋紙を用意して、内容や書き手ごとに色分けすると議論が活性化します。

プログラム名ワークショップのプログラムを場面ごとに切り分け、タイトルをつける
参加者の反応参加者の反応を洗い出す。ポストイットの色を使い分け、好意的な反応と否定的な反応を分けて記述する
意図・目的自分たちの意図・目的を考え直して記述する
課題参加者の反応がなぜ起きたのか、その原因は何だったのか、を掘り下げて考える
改善策課題を解決するための新しいアイデアを考える

2. F2LOモデルによる省察

F2LOモデルは青山学院大学の苅宿俊文氏が提唱した考え方です。

F2LOモデルとは、ワークショップにおいて、それ以上分解できず、その多様で複雑なあり方を捉えることを可能にしてくれる分析単位で、コミュニケーション構造の変化をとらえ、人と人、人と活動の関係性を考える。

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図式で示すと以下のようになり、F=ファシリテーター、L=参加者、O=ワーク・課題、を指します。

ファシリテーターと参加者、ワークをF2LOモデルで図式化することで、ワークショッププログラムの意図と参加者の動きを客観的に把握し直すことができます。ワークショップの映像や記録写真などをもとに、F2LOモデルを描いてみましょう。各プログラムに無理がなかったか、参加者の力量や心情に合わせて、プログラムを変更できたかなど、課題を通して参加者の変化をF2LOに当てはめて分析してみてください。

ファシリテーターについては別記事で詳しく解説しています。

F2LOモデルのよく見られる4パターン

ワークショップの始まる前は、ファシリテーターは参加者のことを知っていますが、参加者同士はお互いを知らない状態です。それをF2LOモデルで表すとこうなります。

次のF2LOモデルにアイスブレイクなどでファシリテーターが参加者を巻き込み、声がけをすることで、ワークの内容を理解してもらうきっかけを作った状態です。

続いてのモデルはメインワークのF2LOモデルです。ここではファシリテーターは参加者への介入度合いを減らし、参加者主体で対話ができるような関係性を示しています。

最後が優れたワークショップ終盤に見られる理想的なF2LOモデルです。課題に没入することで、参加者が自らつながり、ファシリテーターは介入せず観察を通して、参加者を見守ることができる状態です。

終わりに

ワークショップを省察することで、自らのスキルを向上させ、より質の高いワークショップを実践するための準備につながります。参加者の没入感を演出し、質の高い学びを提供するために、必ず省察する時間を設ける努力をしましょう。

creativeog[クリオグ]ではワークショップに関する記事を多数執筆しています。関連記事もぜひご覧ください。

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