フィンランドと日本の子育て観には、社会構造や文化の違いが大きく影響しており、社会全体で子供を育てるフィンランドと家庭内で子供を育てる日本では、価値観が異なります。本記事ではフィンランドと日本の子育ての違いをデータや政策を用いて解説します。
社会で子を育てるフィンランドと家庭で子を育てる日本
私は二児の父親であり、育児は基本的に私と妻の役割です。しかし、核家族化や65歳までの雇用延長が社会に浸透する中、自分たちの親の助けを得るのが難しい状況になっています。その結果、子育ては親に限定され、子が犯したトラブルの責任も親が負うことになります。これでは親が疲弊してしまい、不平不満が噴出し、結果として少子化につながるのではないでしょうか。
実業家の堀江貴文氏は以前、少子化対策について以下のように述べました。
(一夫一妻制は)昔からそうしてるというだけで、惰性で守ってきてるだけの話であって、ある程度、自由恋愛にして、社会で子どもを育てる、みたいな感じにすると、少子化問題も解決されるんじゃないかなと思います。
堀江貴文氏
私は2012年にフィンランドに住んでいた時、フィンランド人の友人が2歳の女の子を育てながら大学に通っていました。彼女は女の子の父親とはすでに別れて、同棲する別のパートナーがいました。そのパートナーは女の子を実の娘のように可愛がっていました。しかし、2023年に再びその友人に会いに行くと、彼女はそのパートナーと別れて同棲を解消しており、パートナーは別の女性と同棲していました。驚いたのは、13歳になった娘の育て方です。日本であれば、養育権を持つ母親と暮らし、婚姻もしなかった母親の元パートナーとは次第に疎遠になると思いますが、その友人宅では娘が母親と元パートナーの家を一週間ごとに行き来しています。このように、婚姻関係に関係なく子を育てようとする価値観や環境が整っているフィンランドは、「社会で子を育てる国」だと感じた実体験でした。
データで見るフィンランドの婚姻と離婚、そして出生
改めて、フィンランドと日本の婚姻や離婚、出生について調べました。
フィンランドと日本の婚姻率と未婚率
フィンランドの婚姻率は近年減少傾向にあり、未婚率が上昇しています。2020年のデータによると、フィンランドの婚姻率は1000人あたり4.0件で、未婚率は40歳時点で約30%に達しています。これは、社会が個々のライフスタイルを尊重し、結婚に対する圧力が少ないことが一因と考えられます。
フィンランドの結婚観
フィンランドでは、結婚に対する価値観が比較的リベラルです。結婚は重要なライフイベントとされる一方で、必ずしも結婚しなければならないという圧力は少なく、多くのカップルが事実婚や同棲といったパートナーシップを選択します。この背景には、社会全体が多様な家族形態を尊重する文化が根付いていることがあります。
また、結婚後も夫婦が個々のキャリアや自己実現を追求することが奨励されており、家事や育児はパートナーシップの一環として分担される傾向にあります。これは、男女平等の意識が高く、共働きが一般的であるフィンランド社会の特徴とも言えます。
フィンランドと日本の離婚率
フィンランドは、離婚率が高い国として知られています。2020年のデータによると、離婚率は1000人あたり2.5件で、2022年の日本の離婚率(1000人あたり1.47件)と比較すると高い水準にあります。離婚が多い背景には、個人の自由や幸福を重視する文化があり、結婚生活がうまくいかない場合は離婚を選択することが一般的です。また、離婚後も子供たちが健やかに成長できるようなサポートが整っている点も特徴です。
フィンランドと日本の合計特殊出生率
フィンランドの出生率は近年低下傾向にあり、2023年の合計特殊出生率は、速報統計で1.26となっています。一方、日本の2023年の合計特殊出生率は1.20であり、フィンランドとほぼ同水準です。両国とも少子化が進行しており、政府はさまざまな対策を講じていますが、出生率低下は歯止めがかかりません。
フィンランドにおける出産と子育て観
フィンランドは、子供を社会全体で育てるという考え方が浸透している国です。政府や地域社会が積極的に子育てを支援し、子供たちが健やかに成長できる環境を整えています。例えば、フィンランドの育児休暇制度は非常に充実しており、父親と母親の双方が育児に積極的に関わることが奨励されています。両親は合計で約14ヶ月の有給育児休暇を取得でき、さらに無給の休暇も利用可能です。このような制度は、父親が育児に関わる機会を増やし、家庭内での役割分担を見直す契機となっています。
さらに、フィンランドの保育園や幼稚園は高品質な教育とケアを提供しており、子供たちが早期から社会性を身につける環境が整っています。フィンランドには、子どもの成長・発達の支援および家族の心身の健康サポートを行う「ネウボラ」という制度があることで有名です。保育園にも待機することなく無償で通える。全ての家庭が経済的負担を感じることなく利用できる点も魅力的です。これにより、親は仕事と育児を両立させやすくなり、子供たちは多様な価値観や社会経験を積むことができます。
終わりに
フィンランドと日本の子育て観や家庭観には、社会構造や文化の違いが大きく影響しています。フィンランドでは、社会全体で子供を育てるという考え方が強く、充実した育児支援制度が整っています。一方、日本では家庭内での子育てが一般的であり、家族の絆が重視されています。しかし、両国とも少子化や離婚率の問題に直面しており、社会全体で子育てを支援する仕組みの強化が求められています。
フィンランドのリベラルな結婚観や離婚後のサポート体制は、多様な家族形態を尊重し、個々の自由を重視する社会のあり方を反映しています。一方、日本の伝統的な家族観や家庭内での役割分担は、家族の絆や協力を重視する文化を象徴しています。
これらの違いを理解し、両国の良い点を取り入れながら、未来の子育て環境を考えることが重要です。フィンランドの社会全体でのサポートと、日本の家庭内での絆を融合させることで、子供たちが健やかに成長できる環境を築いていくことができると考えています。
Creativeog[クリオグ]では、フィンランドに関する記事を多数執筆していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。