参加者を没頭させるワークショッププログラムをデザインするには

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参加者を没頭させるワークショップには必ず、優れたプログラムが設計され、随所に仕掛けが施されています。本記事では、ワークショップを成功に導くためのプログラム作りについて解説します。

ワークショップとは

ワークショップとは、参加者が参加・体験を通じて学び合い、新たな価値を創造するための実践の場です。

ワークショップの基礎については、別記事で詳しく解説しています。

ワークショッププログラムの基本

限られた時間で、目的に向かってより効果的な学びや価値創造が起こりやすくするためには、プログラムや仕掛けを考えることが大切です。

ワークショップには基本型があります。それは「1.受け入れ」「2.導入」「3.メイン」「4.まとめ」の4ステップです。このプログラムの中に、いくつかの難易度が異なるワークを設計し、目的に向かって参加者が自律的に行動できるように仕掛けを組み込みます。


ワークショップでは時間を経るごとにワークの難易度を徐々に上げていくようにしましょう。参加者の関係性ができる前に難しいワークを設定しても、うまくできません。段階を経て難しいワークを与えることで、最終的なゴールを達成することができます。

受け入れ

受け入れでは、参加者が来る前の準備から、実際にワークショップを開始し、事前説明をするところまでを指します。参加者がワークショップの目的を理解し、スムーズにワークに取り組めるように準備するのが受け入れの段階になります。

1. プレワークを用意する

参加者が集まる時間はバラバラで、早い人は開始30分前に会場に来ることがあります。そういった参加者にプレワークを用意して時間を退屈させない工夫が必要です。筆者がよくやるのは、ネームプレートを書いてもらい、いくつか簡単な質問を用意して、答えをネームプレートの裏に書いてもらうことをやっています。

氏名を書いてもらうときは、必ずニックネームを書いてもらっています。これは「肩書き外し」とも言いますが、読んでほしい名前(=ニックネーム)を自ら決めることで、普段の自分から離れることを狙っています。

質問例

  • どんな食べ物が好きですか?
  • 最近夢中になったことは何ですか?
  • 最近どこか出かけましたか?どこに行きましたか?
  • 今日はどんな文房具を持っていますか?

2. 軽食を用意するなど、ちょっとした話題を提供する

参加者の緊張を緩める簡単な方法は、軽食を提供することです。ちょっとしたお菓子や飲み物を用意することで、参加者の会話を生むきっかけになります。ポイントは飲食コーナーを設けて、人を1か所に集めることです。また、軽食もスーパーで変えるものではなく、洋菓子(ケーキ)や専門店の和菓子など、少し高級感のあるものを用意するだけで、参加者の緊張が解けます。このやり方は筆者も実践しており、おすすめです。

3. I DO ARTを参加者に伝える

I DO ARTとは、ワークショップの概要のことで、ワークショップの目的やプログラム内容、時間割など、を参加者に説明すことを指します。

I DO ARTについては別記事で詳しく解説しています。

導入

受け入れの次は導入のプログラムに進みます。導入では、主にアイスブレイクを行う時間をしっかり取りましょう。筆者が実施するワークショップでは15~30分、全体の10~15%はアイスブレイクの時間を割いています。

1. アイスブレイクとは?

氷のように硬直した雰囲気を和ませ、参加者のコミュニケーションを促しお互いを知るために行うグループワーク」のことを指します。私たちは普段の会議で、はじめに自己紹介を行うのもアイスブレイクのひとつと言えます。

2. なぜアイスブレイクが必要なのか?

例えばこんな経験はありませんか?


参加者のほとんどが携帯を見ていて、誰も話さず静か過ぎる。
参加者がこの環境に安心できず不安を抱えている状態だ。


この場の緊迫感はなんだろう。
周りは誰も知らないし、うまくできるか不安だな。


人は誰だって、初めて会う人に不安を感じ、心を許しません。アイスブレイクの時間を通して、お互いが「敵ではない」ことを示す必要があります。

3. アイスブレイクのコツ

アイスブレイクはハードルの低いテーマをひとつ与えて、グループで取り組むことで、他者に対して、「敵でない」ことを示すことを目的としています。その際、自分のタスクに個人で集中させるだけではなく、他者と一緒にやることを意識させることが大切です。また、各参加者にフォーカスを必ず当てることで、他の参加者の視野を広げることに気を付けましょう。アイスブレイクの時間を参加者が能動的に活動できると、自然と参加者主体の場づくりができます。

メイン

メインとなるプログラムは異なるワークをいくつか取り入れながら構成します。構成されるワークは主に2種類に分類できます。

1. アイデアを発散させるワーク

アイデアを広げ、さまざまな可能性を考えるためのワークです。主なワークとしてブレインストーミング* が挙げられます。

* ブレインストーミング
ブレインストーミングとは、グループでアイデアを出し合うことによって、アイデア発想を誘発させるための技法。集団発想法とも言われる。

アイデアを発散させるワークでは、必ず約束ごとを明確にする必要があります。約束ごとを守ってワークに取り組むことで、質の高い成果が期待できます。

なお、約束ごとについては、別記事の中で詳しく解説していますのでご覧ください。

この段階では、アイデアが出てこないことや、議論そのものがうまく進まず、停滞することも少なくありません。この時間は「生みの苦しみ」として知られ、この時間の中で、徹底的に議論し、考え抜かなければ、優れたアイデアは生まれないとされています。

2. アイデアを収束させるワーク

広げたアイデアを合意形成しながら絞り込み、最終的な提案に落とし込むためのワークです。デザイン思考や新規事業開発では、最も難しいワークとなります。それは、どんな基準で絞り込むかが難しいからです。絞り込み方はワークショップに合った手法がありますので、最適なものを選んでください。

まとめ

まとめでは、グループで考えた成果発表と振り返り、ワークショップ全体の講評を行います。特に、振り返りの時間は「グループの人数×5分」程度の時間を設けられると理想です。振り返りは参加者に最も多くの学びを提供することができ、参加者の満足度に大きく影響してきます。ワークショップ全体の講評は、参加者の成果を評価する時間ではなく、参加者の実施てきた作業を振り返り、取り組み姿勢や参加者が夢中で気付かなかった事象などを伝えることで、参加者に新しい気づきを得るきっかけを作る時間です。

終わりに

参加者を没入させるためのワークショップには、しっかりと考え抜かれたプログラムが主催者によって組み立てられています。本記事に掲載された流れや方法を活かして、質の高いプログラム設計ができることを願っています。

ワークショップについては他の記事でもテクニックを紹介していますので、ご覧ください。

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