いまデザイナーとして働くことへの葛藤

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デザイナーとして働くことに疑問を持つことがあります。学生のときは、デザイナーとしてお金を稼ぐことが一番幸せだと感じていました。今は自分のデザインが世に出ていき、人々の暮らしが豊かになると願って日々仕事をしています。しかし、自分の強みとは何かについて考えはじめ、自分の仕事が本当に必要なのか、それともBullshit Job(くだらない仕事)なのか考えるようになりました。その辺のモヤモヤを書いておこうと思います。

デザイナーの役割とは?

デザイナーとして働くことの意義や必要性について、多くの人が考えを巡らせることがあります。デザイナーは単なる美的感覚を提供するだけでなく、社会的影響力を持つ仕事として位置づけられることがあります。初めてデザインの世界に足を踏み入れた時、私は自分の創造性と技術を通じて人々の生活を豊かにできる喜びを感じました。しかし、現在ではその喜びに加えて、自分の仕事が本当に必要なのかという疑問も抱くことがあります。

デザイナーとしての独自の強みを見つめ直す

自分の強みや価値観について考えることは、デザイナーとして成長する上で重要です。私はデザインを通じて世界をより良くすることに貢献したいと考えていますが、その過程でどれだけの影響を与えられるのか、またそれが本当に必要とされているのか、という問いは常に頭にあります。特に近年、技術の進化や社会の変化によって、デザインの役割や価値が再定義されつつある中で、自分のポジションを見つめ直すことは避けて通れません。

デザイナーに必要な要素:精神的な強さとは?

デザイナーにとって必要な要素として、私は「精神的な強さ」を挙げます。強さには大きく2つに分かれます。ひとつは「しなやかさ」のような強さです。最近では英語を語源とするレジリエンス(Resilience)とも言われます。しなやかの意味は「弾力があってよくしなう様子。よくたわむ様子。」を指すことから物体そのものは固いわけではなく、強い外力がかかっても、物体は折れることなく弾みしなるのがしなやかさと言えます。一方、鋼鉄のような強さである「頑丈」な強さです。ちょっとの力ではビクともせず、耐え抜く力が非常に強いことを指します。しかし弱点もあります。鋼鉄の場合は、低温になると物体そのものが脆くなり、割れたり折れたりします。人間の精神においてもある限界点を越える外力(負荷)が加わるとポキっと折れてしまうことがある点において、鋼鉄の性質は人間と類似していると思います。デザイナーはどちらかというとしなやかさとしての強さを持つことが必要だと思っています。デザイナーは変化の激しい環境で働くことが多く、プロジェクトが進む中でさまざまな試練に直面することがあります。その時、しなやかさは柔軟に対応し、新たな解決策を見つけ出す力を指します。一方で、頑丈さは困難に立ち向かい、持続可能な成果を生み出すための力となります。デザインの世界で成功するためには、両者のバランスが重要です。

強い人間になるのを阻む要因

「関係性の常時リセット」という視点で考えてみましょう。特に企業でのインハウスデザイナーとして働く場合、ギブアンドテイクの関係が主流です。しかし、これが関係性の希薄化を招き、デザイナーとしての信頼性や影響力を低下させる恐れがあります。ギブアンドテイクによってデザイナーは頼りにならない弱い人間なのではないかと焦りを感じます。これからも金銭のやりとりが発生する限り、深い人間関係が築けないと思います。なぜならばデザイナーとしての技能を提供しても、対価(金銭)というテイクを得てしまっているからです。

考えてみると近年は副業を含め、そのほとんどの活動に貨幣が絡み始めています。みんなが金銭を取ることを重視し、そこに時間を割くため、自治会や地域ボランティアなど無償の奉仕をやりたがらないと感じます。つまり、人間関係が終わると貨幣経済が始まったと言えます。つまり、人間関係に依存しない人は貨幣経済に依存するだけのことなのかもしれません。私たちは金銭によるギブアンドテイクの関係性から自らを解放する必要があると考えています。

強い人間になるためには「粘っこい」人間関係を築く

まだ適切な表現が見つかっていませんが、強い人間になるためには「粘っこい」人間関係を築くことが大切だと思います。これは、相手の長所と短所を理解し合い、関係を簡単に放棄しないような結びつきを築くことです。あるいは、同じ志を持つ仲間たちと集まり、金銭の授受がない純粋なスキルの提供と受け入れが行えるコミュニティに参加することです。金銭が介在すると関係がリセットされやすいため、無償の奉仕を通じて関係性を深めることが求められます。どうしたら粘っこい人間関係を築けるのでしょうか。まずは頼まれることに応えることです。コミュニティへの奉仕の重要性はここにあるのではないかと思います。

デザイナーの将来像とは?

デザイナーとしての将来像について考えてみましょう。技術の進化や社会の変化により、デザインの範囲はますます広がり、その役割も多様化しています。これからのデザイナーに求められるのは、単なる美的感覚だけでなく、共感力を持ち、社会的影響力を持つことができる能力です。技術が進歩する中で、人間のニーズや価値観を理解し、それに基づいた革新的な解決策を提供することが求められます。そして、前章で書いた通り単なる取引だけでなく、持続的な関係を築くことが重要だと私は思います。例えば、社内では自発的に他人を助ける行動や、社外では無償奉仕活動を通じて本物のつながりを築けるのではないでしょうか。金銭を超えた真の価値として、粘っこい人間関係はとても貴重です。

終わりに

デザイナーとして働くことの意味や価値について、日々考えることは決して無駄ではありません。むしろ、それが自己成長と専門性の深化につながる道となるのではないかと私は考えています。。自分の強みを理解し、精神的な強さを養いながら、粘っこく持続可能な人間関係を築くことが、今後のデザイナーとしての生きる道です。creativeog[クリオグ]では、デザインに関する記事を多数執筆しています。他の記事もぜひご覧ください。

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