動画でわかるフィンエアーのUXデザイン

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フィンランドのフラッグ・キャリアであるフィンエアー(Finnair)はUX(User Experience:ユーザー体験)に注力しています。また拠点とするヘルシンキヴァンター空港は「サイレント・エアポート」として、顧客体験を重視していることで有名です。今回はフィンエアーのヘルシンキ・ヴァンター空港およびフィンエアーの飛行機内のUXについて解説します。

フィンエアーのUXを形成するものは何か

フィンエアーのUXを形成するものはおおまかに以下に分解できます。

事前UX:航空券の検索・予約、チケットの発券、事前チェックイン
渦中UX:搭乗、接客、食事、メディア、空間(座席やアメニティ)
事後UX:目的地への到着後の案内、ロストバゲージ対応、手荷物破損、マイル加算

事前UX

フィンエアはチケットの発券やチェックインをアプリやウェブでシームレスに手続きすることができます。アプリのUXについては別記事で詳しく記載していますので、興味ある方はこちらをご覧ください。

渦中UX

渦中UXとはユーザが空港に到着してから飛行機に搭乗し目的地までの飛行機滞在中のUXのことを指します。日系航空会社におけるUXは「接客」と「食事」が占める割合が大きいと言われます。日本の接客はきめ細かで、細部まで行き届いていることから、人的資本を用いて乗客に優れたUXを提供していると言えます。一方で、フィンエアーでは「デジタル」と「空間」に注力して優れたUXを築こうとしているように、筆者は感じています。ユーザフレンドリーな機内エンターテイメントと快適な環境を飛行機内で乗客に提供することで、満足度を高めるのです。

空港施設

ヘルシンキ・ヴァンター空港は「サイレントエアポート」として有名です。2015年には欧州で初めて仮眠用の設備である「スリープポッド」が導入されました。このように、ヘルシンキ・ヴァンター空港はノイズを最小限に抑え、快適な空間を提供しようとしています。さらに、空港内の空間設計にも力を入れ、フィンランド人建築家のアルヴァ・アアルトや工業デザイナーのエエロ・アアルニオなど著名なデザイナーによって手がけられた椅子が配置されています。このようにして、ヘルシンキ・ヴァンター空港は北欧デザインを基調とし、フィンランドの文化と結びついた空間を安らぎとともに提供しています。ヘルシンキヴァンター空港は改修を終え、今はセキュリティコントロールに入場するすべての利用客がひとつのゲートに集約されました。そのため、行列が生じて待ち時間が多くなっている点だけ注意が必要です。

セキュリティエリアおよび出国エリア

セキュリティエリアを通過すると、訪れることができるのがオーロラ観賞スペースです。フィンランドはオーロラで有名な国であり、空港内でもオーロラを観賞することができます。サイレントエアポートなので、ここで静かな空間でオーロラを楽しむ時間が提供されます。

機内

フィンエアーのUXの中心と言えるのが、「デジタル」と「空間」です。フィンエアーの機内エンターテイメントは、乗客の飛行体験にワクワクを提供し、快適に過ごすための情報を提供しています。また、機内空間はビジネスクラス以上であれば各社の個性が生まれます。しかし筆者を含め、多くの人はエコノミークラスを利用するのではないでしょうか?この場合、飛行機内において「デジタル」と「空間」は高いUXを提供する上で重要です。

機内エンターテイメント

今回筆者が乗ったのはエアバスA350で新しい機体です。フィンエアーはフィンランドのデジタルデザインエージェンシーであるReaktorと提携し、カスタマーエクスペリエンスのあらゆるタッチポイントを調整する取り組みを開始しました。フィンエアーのアプローチは、まず第一に、乗客の実際のニーズに応え、安心感を提供すること。そして第二に、楽しい飛行体験を実現するために機内エンターテイメントの向上に焦点を当てています。Nordic Skyエンターテイメントシステムを通じて、乗客は機内での時間を自分でコントロールできます。フライトブループリントは離陸から着陸までの全ての出来事を伝え、機内メニューから最適な睡眠時間までサポートし、乗客が飛行時間をパーソナライズできるようにします。

座席の背面にあるスクリーンは、フィンエアーの乗務員アプリに接続されており、乗務員はリアルタイムでフライトの計画を調整し、機内での購入を処理できるようになります。

https://www.reaktor.com/ja-jp/work/finnair

空間

フィンエアーの特徴の一つは、搭乗者の体験に合わせて変化する機内照明です。筆者が利用したエアバスA350では、「Space Alive」のコンセプトに基づいた照明が採用されています。このデザインは、ヘルシンキのデザイン会社「dSign Vertti Kivi & Co社」によって手がけられ、時間帯や目的地、季節に応じて色彩、照明、雰囲気が変化し、搭乗者に快適な時間を提供します。機内のアンビエント照明はLED照明を使用しており、さまざまな雲の動きを演出するだけでなく、眠気を誘うオーロラのダンスや北極の光など、フライトの進行に合わせて機内の雰囲気を段階的に変化させます。

事後UX

事後UXについて、フィンエアーは特記すべきサービスを提供していないと感じています。引き続き注意深く調査していきます。

なぜフィンエアーのUXデザインが優れているのか

フィンエアーにはUXデザイナーがいる

フィンエアーには、UXデザイナーが在籍しています。筆者の友人もその一員で、日々フィンエアーの搭乗体験を向上させるための取り組みに従事しています。彼らの仕事は、UXを中心に据えたユーザインタフェース(アプリや機内エンターテイメントの画面)の開発から、シートを含む機内空間のデザイン、アメニティやテキスタイルなどのデザイン開発、さらにはブランディングやデザインシステムの設計まで、多岐にわたります。彼らの知恵とアイデアがフィンエアーのUXを形成しています。

また、インハウスデザイナーとデザインエージェンシーのReaktorやdSign Vertti Kivi & Coが協力してアプリを開発することで、質の高いUXを提供できているのかもしれません。

https://www.reaktor.com/ja-jp/work/finnair
https://www.dsign.fi/en/

フィンエアーのリファレンスガイドについて

フィンエアーはデザインシステムに関するリファレンスガイドを公開しています。こちらには先述したカラーパレットの他に、UIに関するガイドラインも記されています。リファレンスガイドにより、乗客に一貫したLook&Feelを提供することが可能となります。

https://brand.finnair.com/en/brand-basics/colours

終わりに

本記事では、フィンエアーの渦中UXについて、デジタルと空間を軸に解説しました。筆者は毎回フィンエアーを利用するたびに、どんな体験ができるのかを楽しみにしています。creativeog[クリオグ]では、フィンランドに関する記事も多数執筆しています。他の記事もぜひご覧ください。

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