
〜SPIAモデルで「伝える」から「伝わる」へ〜
プレゼンテーションや商談、ワークショップ、採用面接や社内会議──私たちは日常の中で「自分の考えを伝える機会」に多く直面します。しかし、相手に情報は届いても「心には響かない」「行動につながらない」と感じた経験はないでしょうか?情報があふれる今だからこそ、「論理」だけではなく「共感」を軸にした伝え方が求められています。本記事では、聞き手の心に届く伝え方として、SPIAモデルを紹介します。
SPIAモデルとは?
SPIAは、以下の4つのステップから構成されるコミュニケーションのフレームワークです。
- Story(原体験)
- Problem(課題)
- Insight(気づき)
- Action(実行・提案)
この順番で話を構成することで、聞き手の心を自然に引き込み、納得や共感を呼び起こすことができます。
1. Story(原体験)
まず、自分がそのテーマに関心を持った「個人的なきっかけ」や「背景」を語ります。感情のこもった具体的なエピソードが、聞き手の注意を惹きつける入口になります。
- どんな出来事・きっかけがあったのか?
- その時どんな感情が動いたか?
事例:
「私は学生時代、地方の商店街でアルバイトをしていました。ある日、杖をついた高齢の女性が来店し、『近くに買い物に行くのも一苦労なの』と話されていたのが強く印象に残っています。」
2. Problem(課題)
その体験を通じて気づいた現実の壁やギャップを明確にします。単なる「不便」ではなく、「なぜ問題なのか」「誰にとって影響があるのか」を伝えることで、話が深まります。
- その体験を通して見えた課題は?
- 社会的・構造的にどのようなギャップがある?
事例:
「調べてみると、地方では車が運転できなくなった高齢者が、日常の買い物や通院すら困難になる『買い物難民』として取り残されている現状があると知りました。」
3. Insight(気づき)
自分自身がその問題に向き合う中で得た「教訓」や「本質的な気づき」を共有します。ここでは感情と論理の両面が共存することがポイントです。
- どのような気づきがあったか?
- それはどういう意味を持つのか?
事例:
「制度的な支援もありますが、『人と話す相手がいない』『移動が不安』といった心の側面こそが、日常生活の継続を困難にしていると気づきました。」
4. Action(実行・提案)
最後に、その気づきをもとに具体的な行動や提案を示します。ここまでの流れを踏まえていることで、説得力が生まれます。
- 自分がとった行動、または相手に提案したいことは?
事例:
「私は地域の介護団体と連携して、買い物支援と見守りを兼ねた移動サービスの実証実験を始めました。」
SPIAモデルの特長:感情と論理の架け橋
SPIAモデルは、ただの「報告」や「主張」ではなく、自分の原体験(Story)から始まり、感情的共感をベースに論理的提案(Action)へとつなげる構造を持っています。
この構造があることで、聞き手は話し手の意図や熱意に納得しやすくなり、「それは自分にも関係ある」と自然に共感する流れが生まれます。
SPIAモデルと「起承転結」の違いとは?
日本の話の構成法としてよく知られているのが「起承転結」です。では、SPIAとの違いはどこにあるのでしょうか?
構成 | 概要 | 特長 |
SPIA | Story, Problem, Insight, Action | ビジネスやプレゼン向け。論理と感情を両立しながら、目的に向かって話を組み立てる。 |
起承転結 | 起=導入、承=展開、転=転換、結=結論 | 文学的・ストーリー性重視。話に緩急が生まれる。感情の起伏がある。 |
共通点:
どちらも「一方的に情報を押し付ける」のではなく、流れをもって聞き手を巻き込む構造を持つ。ストーリー性があり、聞き手の関心を引きつけやすい。
違い:
起承転結は文学・ナラティブに適しており、「転」の部分で意外性や感情の揺さぶりがある。SPIAは納得と行動喚起にフォーカスしており、「気づき」から「提案」に自然につながる構成になっている。
終わりに
伝えたいことがあるとき、私たちはつい「事実を整理して順序よく並べれば伝わる」と考えがちです。しかし、相手に“伝わる”ためには、感情と論理の両方が必要です。SPIAモデルを使えば、
「自分はなぜこれを話しているのか」→「どんな課題があるのか」→「そこから何を学んだのか」→「だからどうすべきなのか」
という心に届くストーリーラインを描くことができます。ぜひ、次に誰かに何かを伝えるとき、SPIAの4ステップを意識してみてください。あなたの言葉は、きっと聞き手の心に届き、行動を促すものになるはずです。creativeog[クリオグ]では、コミュニケーションに関する記事も多数執筆しています。他の記事もぜひご覧ください。