企業はPRやIRなど、さまざまなステークホルダーと良好な関係性を築くために多大なリソースを割いています。関係構築を効率的に行うため、広報部門を中心にコミュニケーション戦略を立案し、実行しています。本記事では企業が取り組むべきコミュニケーション戦略と、UX(ユーザー体験)について解説します。
UXを考える上で知っておくべき知識
企業が取り組むコミュニケーション戦略におけるUXを解説する前に、理解しておくべき言葉を2つ挙げます。この2つの言葉を理解した上で、本記事を読んでいただきたいと思っています。
ギャレットのUX5段階モデル
UXデザインの5段階モデルは、表層、骨格、構造、要件、戦略の5段階の肯定に分けた考え方で、ギャレットのUX5段階モデルとも言われます。この5段階のうちひとつでも欠けると、優れたUXデザインとは言えないとされています。
- 表層(ビジュアルデザイン)
- 骨格(レイアウト・ナビゲーション)
- 構造(情報設計)
- 要件(コンテンツ・機能)
- 戦略(利用者のニーズ・サービスの目的)
ギャレットのUX5段階モデルについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
AIDOMA / ULSSAS
コミュニケーション戦略において、マーケティングを理解することは大切です。代表的なものはAIDOMAです。AIDOMAは90年代に普及した考え方でいまでも多くのビジネスモデルで活用されています。詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
また、1990年後半から2000年代に生まれ、SNSネイティブと言われるZ世代の購買プロセスは「ULSSAS」と呼ばれており、これまで定説とされたAIDOMAとは違って、SNSを中心とした購買行動に変わりつつあります。ULSSASについては、別記事で詳しく解説しています。
企業が抱えるコミュニケーション戦略の課題
コミュニケーション戦略においてUXを考えるとき、非デザイナーは抽象的な5階層目の「戦略」ばかりに意識が向けられ、より具体的な表層や骨格まで意識が向かないことが多いのが現状です。一方でデザイナーは表層への関心が高いため、要件や戦略まで介入しません。こういう状況では、役割が縦割りになるため、優れたUXが生まれにくいのです。また、マーケティング視点が欠けることも多く、時間軸を考慮しないUXを設計する失敗例も多く見受けられます。そのため、コミュニケーション戦略でエンゲージメントを醸成させたい場合は、優れたUXをユーザーの心理状態に合わせて提供することが大切です。
コミュニケーション戦略におけるUXでエンゲージメントを高める
コミュニケーション戦略におけるUXを考える際には、ギャレットのUX5段階モデルとAIDOMA/ULSSASと購買行動について理解した上で、メンバーと議論することが大切です。例えば、エンゲージメントを高めたいという目的のためにコミュニケーション戦略を立てる場合は、まず全体を俯瞰した流れを考えます。下図はエンゲージメント醸成のためのタッチポイントをまとめたものです。
ここから、各タッチポイントの要件を定め、ワイヤーフレームを設計し、ビジュアルを作成するのです。これをデザイナーが上流から参画することで、途切れのないUXをユーザーに提供することができます。
終わりに
なかなか、コミュニケーション戦略にデザイナーが参画することは難しいかもしれません。しかし、事業会社などで他部門と連携が取りやすい環境であれば、積極的に上申して、戦略立案にまでデザイナーが入り込めると、優れたUXを構築することができます。ぜひ本記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。Creativeog[クリオグ]では、コミュニケーションに関する記事を多数執筆していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。