1990年後半から2000年代に生まれ、SNSネイティブと言われるZ世代の購買プロセスは「ULSSAS」と呼ばれており、これまで定説とされたAIDOMAやAISASとは違って、SNSを中心とした購買行動に変わりつつあります。本記事では、企業がZ世代をターゲットとしたときの広報・マーケティングにULSSASを取り入れる方法について解説します。
ULSSASとは
ULSSASは、ユーザーがSNSで投稿したコンテンツを起点とする購買プロセスです。ULSSASのプロセスは自律的に回る「フライホイール(弾み車)」になっている点がこれまでの購買モデルと大きな違います。つまり一旦弾みが付けば、勝手に情報が拡散し、認知普及が加速するのもULSSASの特長のひとつです。
U:UGC(認知:ユーザー投稿コンテンツ)
L:Like(いいね!)
S:Search(SNS検索)
S:Search(ウェブ検索エンジンでの検索)
A:Action(購買)
S:Spread(拡散)
企業の投稿や広告がユーザーの目に留まり、いいね!やシェアするところからULSSASのプロセスが始まります。企業発信の情報がいいね!やシェアされると、ユーザーのフォロワーに情報が拡散されます。そして、別のユーザーが興味を抱き、SNS内で購買するかどうかの検索が始まります。次に、SNSでの検索で購買を決意すると、具体的な購買方法をGoogleやYahooといった検索エンジンを活用して情報を取得し、製品や体験を購買します。さらに、購買したことを自らのSNSで拡散し、それが別のユーザーのUGCとなって自律的にクルクル回るのです。
ULSSASの購買パターン例
U:Instagramで友人がコンビニスイーツの新商品であるカスタードプリンをアップしているのを見つけた
L:とても美味しそうだったのでいいねした
S:他にもレビューを見ようと新商品名をInstagramで検索すると美味しそうな写真が次々に見つかった
S:価格や発売地域をGoogleで検索した。
A:コンビニでプリンを購入した
S:とても美味しかったのでInstagramでプリンの写真を掲載した
ULSAASを活用した広報・マーケティング
Z世代を中心にULSSASの購買プロセスが浸透するなか、企業の広報活動はULSSASを意識し始めています。SNSを活用することで、企業のメディア露出を増やし、Z世代の優秀な人材を獲得することを狙っているためです。消費財ブランドは早期からULSSASに着目して広報・マーケティング活動を行っていましたが、近年はBtoBや製造業など、いわゆるお堅い企業までもがULSSASを活用し始めています。
下図は広報やマーケティングの活動において、ユーザーのエンゲージメント向上までのプロセスを概念的に示したものです。
企業は、まず自社の報道や広告をきっかけに認知を図ります。そしてユーザーが検索をしながら、企業のホームページにアクセスするように仕向けるのです。そこでエンゲージメントを醸成して、行動に移すレベルまでエンゲージメントを高めていきます。そして最終的には企業のファンになってもらうことで、企業の投稿にリアクションしてもらう確率が上がり、ULSSASの好循環が生まれます。
広報・マーケティングにおけるUGCの作り方 4選
ULSSASを用いた広報やマーケティングで最も重要なのがUGCを量産することです。企業の発信した情報をどれだけシェアさせるか、いいねをもらうかがULSSASの好循環を生むための必須条件です。そのためZ世代の興味や関心を理解した上で、情報を発信する必要があります。ここからは、UGCを獲得するための4つの方法について解説します
(1)ユーザー視点の情報を発信する
企業が広報として記事を書くと、企業が伝えたいことが前面に出てしまいます。そうではなく、ユーザーにとって企業の製品やサービスがどう貢献できるのかを書くことが大切です。企業本位ではなく、ユーザーに寄り添った投稿をすることで、UGCを多く獲得することができます。
(2)社会課題に関連して情報を発信する
Z世代は購買において社会課題を意識します。代表的な例はZ世代に浸透する「エシカル消費」です。
エシカル消費とは
消費者庁
消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。
Z世代は日本における「エシカル消費」をけん引する世代です。Z世代を中心に環境への意識が高まりは日本に限らず、世界共通で見られています。そのため社会課題に関連した情報を発信すると、Z世代の関心に響きUGCを獲得する確率が高まります。テーマとしてはエシカル消費のほか、ESG、SDGs、カーボンニュートラルが共感を呼びやすいです。
エシカル消費をけん引するZ世代の価値観については、電通報の記事が参考になりますので、ぜひご覧ください。
また、エシカル消費に関連してcreativeog[クリオグ]ではエシカルデザインの記事を書いていますので、ぜひご覧ください。
(3)「中の人」を作って企業を擬人化し、ブランディングする
広報やマーケティングにおいて企業アカウントはガバナンスや社内規定などの関係で、機械的で中正な文章や表現に留まることが多いです。感情が伴わない投稿は炎上リスクが小さいものの、ユーザーの関心を引かず、結果的にUGCが下がる傾向にあります。
そこで近年注目されるのが「中の人」と呼ばれる広報担当者の存在です。企業の事業内容に寄り添ったキャラクターを演じた中の人が、誠意ある投稿を継続することで、UGCが拡大します。中の人が有名なSHARPのアカウント(@SHARP_JP)は、2022年3月時点で約82,6万人がフォローしています。
中の人に関する詳細はPR TIMES MAGAZINEをご覧ください
(4)情報をSNSに最適化する
発信する情報をSNSに最適化することで、ユーザーの共感を得られやすくします。文章は簡潔にまとめ、サムネイル画像を美しく加工する必要があります。Z世代は言葉ではなく絵や写真などの視覚情報で情報の取捨選択を行いますので、サムネイル画像には力を入れましょう。
また、URLを貼り付ける場合は、記事の写真や見出しが表示されるOpen Graph Protocol(オープングラフプロトコル, OGP)のメタタグを実装するようにしましょう。写真が表示されることで、ユーザーが企業情報をシェアする可能性が高まります。
終わりに
ULSSASはマーケティングプロセスとして有名ですが、実は広報活動においても活用することができます。本記事では、広報活動におけるULSSASを概念図を用いて解説しました。ぜひ広報活動でお役立ていただければ幸いです。creativeog[クリオグ]では、広報に関するさまざまな情報を発信していますので、他の記事もぜひご覧ください。