大企業の広報が社長交代の時に実践する「攻めの広報」戦略

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

社長交代は企業経営の新陳代謝を促し、企業価値を最大化させるきっかけになります。そのため、社長交代をするときには、積極的な広報活動、いわゆる「攻めの広報」が大切です。本記事では、社長交代の時に、大企業の広報担当者が実践するコーポレートコミュニケーションを解説します。

攻めの広報とは

攻めの広報」とは、会社情報をメディアに取り上げてもらい、情報拡散することを目的として、メディアへ積極的にアプローチする広報活動です。攻めの広報は、自社のネガティブなメディア報道を最小限に止め、炎上を火消しする「守りの広報」と対比する形で用いられます。戦略が功を奏し、メディアへの露出が増えると、企業価値の向上につながります。

社長交代の時に実践すべき「攻めの広報」とは

社長が交代したときは、メディアの企業に対する関心が高まっています。そのため積極的に情報を開示することで、記事化される確率が上がるのです。この好機を逃さないように、広報担当が実践すべき4つの施策について解説します。

4つの施策

(1)経営方針を発信する

新社長の就任に合わせて、経営方針を明らかにし、所信表明をする必要があります。既定路線の企業経営を行うにしろ、改革路線を進むにしろ、言葉にすることが大切です。

プレスリリース

社長交代について、プレスリリースを書く企業がほとんどだと思います。プレスリリースはメディアとつながるための手段です。リリース文がなければメディアは相手にしてくれません。プレスリリースでは、社長交代の目的や意義、新社長の略歴を簡潔にまとめることで、メディアの関心を引き寄せることができます。また、メディアの要望に即座に応えられるように、事前に新社長の詳細な経歴書や写真を用意するようにしましょう。写真を送付することで、企業が意図した印象をメディアを通して視聴者に与えることができます。

記者会見

リリースを発信するのと合わせて、記者会見は必須の広報活動です。記者会見は社長の所信表明の場でもあり、企業経営の方針を社外に発表する最適な場となります。新型コロナ蔓延以前の記者会見では、メディアを呼ぶためにホテルの宴会場や大規模な貸会議室で行うことが多く、費用と手間がかかるものでした。しかし、現在の記者会見はオンライン配信に切り替わっています。オンライン記者会見は「開催費用と削減」と「記者の参加意欲向上」の2つが期待できます。オンライン記者会見は配信設備を整えれば、場所を問いません。配信機材はPCとカメラがあれば十分なので、記者会見にかかる経費が大幅に削減できます。また、記者は記者会見に足を運ぶ必要がなくなるため、1日で参加できる記者会見の数が増えました。記者からすると「時間空いてるし、聞いてみるか。」ということで、記者会見へ参加意欲を向上させることができます。

映像

映像は企業ブランドを体現するためのものです。一過性のプレスリリースや記者会見と違い、映像は長い間活用でき、企業の広報活動に役立ちます。例えば、映像の中で、新社長自らが経営方針だけなく、企業のパーパス(存在意義)、ミッション、バリューを説明することで、ブランド映像として人材採用の場や展示会などで広告として活用することができます。
パーパス・コミュニケーションについては、別記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

SNS

攻めの広報を成功させるためにはSNSを効果的に使えることが大切です。SNSで拡散され、利用ユーザーの間で評判になればメディアが取り上げる可能性が高まります。SNSは投稿者の人間性を感じられる文章を書くことで、ユーザーの印象が良くなります。

(2)取材を受ける

新社長に興味を抱いたメディアがいれば、積極的にインタビュー取材を受けましょう。インタビューでは、経営方針や事業戦略といった企業価値に直結する話題だけでなく、社長個人に関しても言及することが大切です。インタビューを打診する時点で、メディアは経営方針などを事前に調べていますので、インタビューでは社長の人柄や経営にかける思いなど、視聴者の心情に訴えるような文脈を語ることが効果的です。また、記者からの質問については誠意ある回答をするように心掛けましょう。

(3)株主と対話する

株主は企業経営において、重要なステークホルダーです。株主の意向や意見を真摯に受け止める姿勢を示すことで、株主の信任を得ることができ、中長期の経営を安定させることができます。いま、日本の株式市場は外国の投資家が多く売買をしており、主要株主が外国籍企業であるケースも増えています。外国籍企業は日本企業に比べて株主至上主義の姿勢が見られます。そのため、株主との対話を密に取り、執行側と株主が選任した取締役が
良好な関係を築けるようにしましょう。

(4)社内コミュニケーションに注力する

従業員は、企業価値を生む源泉であり最も大切にすべきステークホルダーです。従業員に対して正しいコミュニケーションを取ることで、従業員の企業に対するエンゲージメントが高まります。

メッセージ映像を配信する

従業員へのメッセージ映像を配信することで、従業員への信頼を獲得することが期待できます。あるいは従業員を集めて、全体訓示を行うのも効果があります。訓示や映像配信する場合は以下のことを文脈に盛り込むようにしましょう。

  • 従業員のことを大切にしている
  • 企業への思い入れを伝える
  • 企業価値向上のために尽力する
  • 従業員との対話を重視する
  • トーンアットザトップ*の姿勢を貫く

*トーンアットザトップとは
トーンアットザトップ(Tone at the Top)とは、経営者が社員に見せる倫理的な姿勢。あるいは企業倫理が浸透する社風を指す。

従業員との対話会を企画する。職場訪問を行う

従業員の声を直接聞く姿勢を示すことが大切です。傾聴の姿勢で従業員と対話することで、従業員のエンゲージメントを高め、企業の生産活動が向上します。できる限り現場に足を運び、直接従業員と語ることが大切です。あるいはオンラインでの対話会を定期的に実施することで同様の効果が得られます。

社内報の発行する

社内報は企業活動を従業員に知ってもらうための広報誌として多くの企業が発行しています。従来は紙冊子や新聞という形で配布していましたが、近年はデジタルに移行しています。企業の社内報の形態に合わせて見せ方を変えながら、経営方針を伝えることが大切です。また、従業員と対話する様子や、社長のプライベート写真など、従業員の共感を呼ぶコンテンツを準備すると、支持率を上げることが期待できます。

終わりに

社長交代の時に、4つの攻めの広報活動を実践することで、メディア露出を増やすことができ、従業員エンゲージメントを高められることができます。好機を逃さず、さまざまな取り組みを試みてください。creativeog[クリオグ]では広報に関するさまざまな情報を発信していますので、他の記事もぜひご覧ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもお読みいただけます