私は従業員エンゲージメントを向上させるための組織変革に取り組んでいます。しかし、いまだ良い結果は出ていません。そんな中で、加藤雅則氏の「両利きの組織をつくる」を読了し、さまざまな気づきを得たので、備忘録としてまとめます。
※本記事は加藤雅則氏の「両利きの組織をつくる」の内容から筆者が得た気づきをまとめたものです。ぜひ皆さんも加藤氏の著書を読んでみてください。
組織変革を実行するのはコア集団を作ることから始める
組織変革で最も大切なのは、「成功事例をいかに早く作ることができるのか」だと思います。私の経験では、特に重厚長大なメーカーなどでは、小さい成功を高速で生み出し、スケールアップさせていくことが求められると感じます。そこで経営トップは変革をリードするコア集団を作り、彼らが成功事例を作るように支援することが必要です。
そもそも組織変革とは、経営トップの意思表示(トップダウン)と、それに呼応する中堅・若手が現れて変革を実行する(ボトムアップ)両輪がうまく動き出す状態を指します。強い組織、活性化している組織は、この変革を実行する人材の割合が一定数を超えています。(閾値は16%とも言われています)まず、企業は16%にあたる変革人材を発掘してコア集団を形成することが大切です。そしてこのコア集団が、経営トップが立てた変革の旗に応じて、彼らの中で変革のストーリー(ナラティブ)が語られ始める状態が変革の証なのです。
組織変革の2つのアプローチ
サンドイッチ方式
経営トップと中堅・若手が変革に向けた対話を繰り返すことで、変化を拒む層(多くの場合では部長職になることが多い)を上下の両方向から挟み込む方法です。この変革アプローチでは、コンサルタントやファシリテーターを外部から招へいして支援してもらうことが有効です。短時間で実りある対話を行うためには、普段の組織力学に囚われず、対等な立場で対話できる場づくりが鍵となることが多いためです。さらに、外部支援者は当事者同士では言語化しにくいこと(タブー)を言語化することも役割のひとつです。このような理由からサンドイッチ方式を実施するときは、外部支援者に助けを求めることが有用な手段です。
バイラル・チェンジ(感染的変化)
「バイラル・チェンジとは、流行は他人の行動をマネする(コピーする)ことから生まれる、というシンプルな原則に基づいている。」(両利きの組織をつくる,p154)
と書かれているように、変革人材同士がお互いに刺激しあい、変革にむけて行動できるように仕掛けるアプローチです。一般的に、変革人材は部門を越えて他の変革人材を知っていることが多いです。経営トップの意思表示を起点に、変革人材同士をつなぎ、お互いの活動が感染するようなコア集団を形成するのが、バイラル・チェンジです。このアプローチにおける外部支援者の役割は、経営トップの目線と現場を知るコア集団の目線を揃え、本質的な組織課題を顕在化させることです。現場で対話を重ねながら、組織が持つ可能性を想像し、引き出すことも役割として考えられます。
変革人材が備わった活発な組織
本章では、「両利きの組織をつくる,p191」の組織図から変革人材が備わった活発な組織について考えます。
かつて事業規模の拡大が優先された時代の組織は階層構造を特長とし、役職者が経営と若手を結ぶ潤滑油として重宝されました。しかし、2000年代の効率性を重視した組織では欧米型のトップダウンの度合いが強まり、組織はサイロ化してしまいます。そして、これから増えるのは機会探求を重視し、ギルドのように必要に応じて柔軟に規模を変える組織でです。それは自律分散型(ネットワーク型)の形態をとり、共通の目的や信頼関係の下に対話を創発することを志向します。多くの企業はいまだ階層構造の組織を有しており、すぐにネットワーク型組織には移行できません。そのため、既存事業領域では階層組織を維持し、コア集団を中心とする変革組織ではネットワーク型組織のマネジメントを試すことで、活発な組織を作ることができるかもしれません。
「両利きの組織をつくる」を読み終えて思うこと
加藤氏の著書で気付いたことは「組織全体を変えるためにはコア集団を形成し、彼らをネットワーク型組織でマネジメントして成功事例を早期に生み出すこと」が組織変革の第一歩ではないかということです。企業の行動パターンや価値観によって取り組み方法は変わるものの、まずは、この組織変革を実行してみたいと思います。creativeog[クリオグ]では従業員エンゲージメントについてさまざまな記事を執筆していますので、ほかの記事もぜひご覧ください。