Form follows function. から Form follows communication. へ

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タイトル

デザイナーなら一度は聞いたことがある”Form follows function.”(形態は機能に従う)という言葉について本記事では、言葉の意味だけでなく、現代の社会背景と照らし合わせたときのfunctionの解釈について解説します。

“Form follows function.”とは

“Form follows function.”は建築家のルイス サリヴァン(Louis Sullivan)が述べた格言で「形態は機能に従う。」と訳されることが多いです。意味は「デザインの美しさは機能に従属する。」というもので、「機能を追及すれば、おのずと美しいものができる」と言い換えることができます。現代では機能美とも言われ、19世紀後半から20世紀初頭の建築および工業デザイン全般に関連するデザインの原則として有名になりました。またこの原則は、ユーザインタフェースやウェブデザインにも当てはまります。装飾を極限までなくし、操作しやすいようにデザインを合理的に考える、というデザイン思想はユーザインタフェースデザインにおいても非常に重要です。

“Form follows function.”の原則は少しずつ変わる

「形態は機能に従う。」という言葉はかつて工業化が急速に拡大してきた時代に生まれました。この時代は大量生産・大量消費の社会背景と重なり、「グッズ・ドミナント・ロジック」に基づいた思想でした。そしてこの言葉は近年まで、デザイナーにとっての原則として親しまれています。しかし、社会は変化し、「サービス・ドミナント・ロジック」に基づくビジネスが広まりつつあります。このような状況下ではサリヴァンの言葉の解釈をいまのビジネスにとってどう捉えていくかが大切です。

サービスデザイナーが意外と知らない「サービス・ドミナント・ロジック」って何?デザイナーがわかりやすく解説!

筆者は仕事で新規事業開発をサービスデザイナーという立場で参画することがあります。その経験のなかで、最近「『形態は機能に従う』という言葉は、サービスデザインや今後のデザイナーはどう解釈したら良いのだろうか」と考えるようになりました。そしてたどりついたのが、”Form follows Communication.”(機能はコミュニケーションに従う。)という解釈です。

Form follows communicationとは(独自説)

facebookやTwitter、Instagram、TikTokなど、私たちはさまざまなSNSを介して友人や他者と交流しています。こういったサービス(あるいはプラットフォーム)はユーザーの「つながりたい。他者と交流したい」という願望を叶えるために最適化されたデザインになっています。つまりコミュニケーションの効率と効果を最大化するために、UIやUXが決められているのです。このように、これからサービスを考える上で、ユーザー同士のつながりを無視することはできません。そのため、筆者はつながりに偏重した21世紀において、functionとはcommunicationと置き換えることができ、「形態はコミュニケーションに従う。」という原則が浸透すると考えています。すでに筆者は別記事において「つながり価値」を創る時代がすぐ来ると述べました。この「つながる価値」を追い求めたときには、つながるために最適なコミュニケーションを定義し、創造されたデザインが美しいものであると考えています。

“Form follows communication.”を体現した事例

Airbnb

Airbnbの価値創造は貸し手と借り手をつないであげることで生まれます。「180カ国で暮らすように旅をする」というコピーにある通り、旅行に「暮らし」という新たな価値を提供します。しかし、予約サイトを運営するだけでは、暮らしを利用者に提供できませんので、価値になはなりません。そこで登場するのが貸し手の存在です。彼らがローカルの暮らしを借り手に伝え、ともに暮らすことで、ホテル滞在では得られない交流や発見が生まれ、それが価値になるのです。Airbnbは旅先でのつながりをユーザーが期待していることを知っているので、ウェブサイトでは、ホストに関する情報が部屋の情報と同等に取り扱われています。そうなるとウェブサイトやアプリのデザインは機能というより借り手と貸し手がどうやってつながり、コミュニケーションできるかを計算してデザインされていきます。そしてこういった個人間の取引にはトラブルが発生しやすいので、トラブルに対する補償をしっかり整えることで爆発的な人気を得ました。このようにAirbnbはコミュニケーションを最適化する形でサービスやUIが設計されている点からも”Form follows communication.”を体現していると考えています。

終わりに

Form follows function.は私たちデザイナーにとって常に心に留めておくべき言葉ですが、時代が変わる中で、functionの解釈はcommunicationへと変わったと考えています。Creativeog[クリオグ]では、デザインに関する記事を多数執筆していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。

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