サービス・ドミナント・ロジックをご存じでしょうか?主にマーケティング業界で使われている専門用語ですが、実はサービスデザイナーにとっても大切な言葉なのです。サービス・ドミナント・ロジックを理解することで、機能と顧客価値を正しく区別し、顧客に提供できる価値を見定めることができます。顧客の提供価値を正しく理解すれば、顧客はサービスを利用し、事業継続できるのです。本記事では、サービスデザイナーのためにサービス・ドミナント・ロジックをわかりやすく解説します。

サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic,以下SDL)とは
従来の経済や経営は高品質のモノやサービスを作って売り、対価として金銭を受領する、売り切り型のビジネスモデルでした。つまり、供給者がモノ自体を創造した価値として提供する「グッズ・ドミナント・ロジック(Goods Dominant Logic,以下GDL)」に基づいていたのです。
一方、SDLは経済や経営そのものがサービスとして捉え、モノを価値として提供するのではなく、価値を供給者と顧客が一緒に創造する考え方です。近年はこのSDLを念頭に置いて事業継続する企業が増えています。本記事では言葉の解説ではなく、このパラダイムシフトが起きた背景や要因について解説したいと思います。
なぜサービスデザイナーはSDLを知っておくべきなのか
デザイナーがサービスを考える上で、顧客の価値を見つけ出す業務があります。残念ながらそこでの分析が顧客視点ではなく、供給者視点になることが多いことをご存じでしょうか。事業会社では、必ず商材があるため、商材の特長=価値だと思い込んでしまいます。しかしこの考え方はGDLに戻づいた価値観であり、SDLではなりません。サービスデザイナーはこの違いを理解しなければ、優れたサービスを創出することはできません。

そもそもの価値づくりとは
一般的に価値づくりという言葉には「交換価値」と「使用価値/経験価値」があります。
交換価値

供給者が高品質なモノを製造し、顧客に提供する際に金銭などの対価と交換する価値づくりです。モノの流通を主眼としておいており、バリューチェーンに根ざした考え方でもあります。

バリューチェーンとは、モノを企画から製造し、顧客が使用するまでを考えるもので、顧客の手に渡った時点で価値づくりは終了します。以後の価値づくりは白紙となり、顧客は価値を消費することになります。そして価値を消費し尽くして、ゼロになったとき、捨てられ、新たなモノに交換されるのです。こういう時代では、廉価に製造し、高機能をモノに付加することで価値をづくり、いかにモノを良く見せるかを注視していました。GDLの考え方です
使用価値/経験価値

モノそのものに価値があるのではなく、顧客がモノを使うことで得られた経験や体験に価値があるという考え方です。使い手が経験(使用)を通じて価値をつくるのです。また経験の中で供給者と継続的な関係性を構築すことにより価値を継続的に生み出すのが特長です。
SDLを理解するためには?
SDLの知識があれば、優れたサービスを作れるわけではありません。良い顧客体験を生み出すには、顧客の課題や行動を観察し、理解することに尽きます。
SDLの先に見据える価値創造とは(独自説)
SDLの価値創造は、使用価値あるいは経験価値に基づいて考えられています。この価値創造の世界観に社会は変化してきており、その流れは加速してきています。
筆者はさらにその先に、関係性・信頼など、つながりによって生まれる価値創造が始まると考えています。これを「つながり価値」と筆者は唱えています。こうした仕組みにおいては、バリューチェーンのような「価値づくりには終点がある」という前提をおいていません。また経験価値のように、供給者と顧客の二者が継続的な関係構築で価値を創造する仕組みでもありません。つながり価値は一連の経験価値がステークホルダー同士のつながりに発展し、供給者だけでなく、顧客同士が継続的な関係生の中で価値を生み出すことで、信頼が醸成されて、関係性が強まる流れです。

要するにサービスにSNSが組み合わさったようなイメージだと想像してください。例えばAirbnbです。Airbnbのサービスは、住まいを貸したい人と住まいを借りたい人をマッチングするサービスです。供給者は単なるマッチングサービスですが、顧客の価値を作るのは、供給者ではなく顧客なのです。住まいを借りる人が、貸す側の人とつながりを持つことで最高の経験になるかもしれませんし、トラブルが起こり最低な体験になるかもしれません。いずれも顧客同士がつながり、コミュニケーションすることで価値が生まれていくのが「つながり価値」なのです。
これからサービスを考えるサービスデザイナーは、つながりがどうサービスの価値を生み出すことができるかを意識することが求められます。
終わりに
本記事ではサービスデザイナーが理解すべき「サービス・ドミナント・ロジック」について解説しました。この知識だけあっても意味はないですが、知識を活用して正しく顧客を理解し、顧客にとっての真の価値を見出すことはサービスデザイナーの重要なスキルだと思います。creativeog[クリオグ]では、サービスデザインに関する記事を多数執筆していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。