ペースレイヤリング(Pace Layering)を理解すれば、未来は想像できる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

VUCAという社会やビジネスにとって未来の予測が難しくなる時代において、多くの企業は未来洞察を通して、未来を想像し、時代に合ったサービスや製品を開発しようと努力しています。その際に重要なのが、時代の世界観を理解することです。本記事では、世界観をどうやって理解し、未来を想像するのかを解説します。

昨今、未来洞察が盛んに叫ばれる背景にあるVUCA

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、もともとアメリカの軍事言葉として使われていました。世界情勢の変化が速くなった2010年代から、社会やビジネスにとって未来の予測が難しくなる状況のことを指します。VUCAが世間一般に広まると、企業は事業開発においてワークショップを開催して未来洞察を積極的に行うようになりました。このような社会変化の中で、注目を集めるのがペースレイヤリングです。

ペースレイヤリング(Pace Layering)とは

1999年にステュワート・ブランド氏が自身の著書『The Clock of the Long Now』でペースレイヤリングのモデルをはじめて発表しました。

pace layering

ペースレイヤリングとは、変化スピードの違う6つの階層によって文明が構成されるという思考です。
各階層がお互いの変化スピードに調和して、役割を果たすことで、文明が存続するとブランド氏は説いています。深下層が足場として機能し、表層が新たな変化を生み出すことができれば、階層間に何らかの摩擦が生じても、それをうまく吸収できる適応力が文明には備わっているとされています。

未来を想像する際には、このそれぞれの階層を漏れなく考えた世界観を描く必要があります。

FASHION:流行

最も時間の流れが早いのがFASHIONです。ここでは、単なる衣装としてのファッションではなく、さまざまな流行を指します。流行は変化の流れが早く、過去の流行が再燃するなど、予測が難しいとされています。

COMMERCE:商業、ビジネス

COMMERCEは商業やビジネスと訳され、その時代で売り上げが伸びているビジネスが該当します。例えば昨今、アウトドアに関心が集まり、アウトドア施設が増えました。また、野外体験活動を支援するビジネスなども増えています。

INFRASTRUCTURE:インフラ、基盤

INFRASTRUCTUREはビジネスを支えるための基盤を指し、電気、社会インフラ、医療などが該当します。

GOVERNANCE:行政、政治

GOVERNANCEは行政サービスや公共サービスを指します。例えば人工知能が発達した未来では倫理観に関する法整備が進むなど、商業やインフラが発展するためには、付随した行政の動きが必ず存在します。

CULTURE:文化

CULTUREは上の階層(レイヤー)によって生まれた人の文化形成や価値観を指します。SDGsやサーキュラーエコノミーなど、時代の潮流となりうる事象が該当します。

NATURE:自然

NATUREは自然界の法則や定量的に予測可能な事象を指します。世界人口の推移や化石燃料の残存量、CO2排出による地球温暖化の予測などが指します。

ペースレイヤリングを活用して、どうやって世界観を想像するのか

ペースレイヤリングは現在、多くの新規事業開発や未来洞察を行う現場において、未来シナリオを描くための手法として活用されています。新規事業を考える上で、市場導入する時代の世界観を想像することはとても大切です。本記事ではワークショップで、ペースレイヤリングを活用した世界観を想像する方法について順に解説します。

ペースレイヤリングの活用して世界観を想像する

①現時点で表出している「変化の兆し」を探す

世界にはさまざまな時代予測や変化の兆しとなる事象が散らばっています。膨大の情報から、皆さんの事業に関連した「変化の兆し」を見つけます。10~20ほど集めるといいでしょう。博報堂が運営する「未来年表」は年代ごとに整理されていておすすめです。

②「変化の兆し」をペースレイヤリングに当てはめる

集めた「変化の兆し」をペースレイヤリングの階層ごとに整理します。整理することで、集めてきた変化の兆しの偏りを顕在化し、議論のポイントを見つけることができます。

③「変化の兆し」が該当する以外の階層について穴埋めする

変化の兆しを中心に全ての階層でどんな変化が起こりうるのか、を想像します。ワークショップなどでは、参加者同士が知恵を出し合いながら議論することで、より精度の高い世界観を思い描くことが可能です。

④人が抱く欲求や課題を探し出し、ビジネスのヒントを見つけ出す

想像した世界観の中で生活していると想定して、自分たちが抱く欲求(ウォンツ)や課題意識(ニーズ)などを探し出します。このウォンツやニーズを正確に把握することで、ビジネスにつながるアイデアを発想することができます。

終わりに

ペースレイヤリングを理解することで、過去、現在、未来の世界観を理解することができます。VUCAにおいて、未来を正しく洞察することが競争社会において優位に立つことができるはずです。ぜひ皆さんの仕事の中でペースレイヤリングを活用してみてください。creativeog[クリオグ]では新規事業開発についてさまざまな記事を執筆していますので、ほかの記事もぜひご覧ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもお読みいただけます