企業は従業員が働きたいと思う環境を整えるため、社内コミュニケーションに注力し始めています。本記事では、従業員エンゲージメントを高める社内報のコンテンツとはどのようなものかを解説します。
社内報が見直される背景
ひとつの企業に長く勤める就社という考えが無くなりつつあります。これからの私たちは、目まぐるしく変化する社会環境に適応するため、個としてのプロを目指し、必要な能力を築き上げるキャリア自律がとても重要になってきます。一方の企業は優秀な従業員が働きたいと思う環境を整える必要になる中で、彼らとのコミュニケーションに注力し、エンゲージメントを高めようとしています。
社内コミュニケーションが重要性については別記事で解説していますので、ご覧ください。
従業員エンゲージメントを高める社内報とは何か
社内報で考えるべきことは、「企業はなぜ存在するのか」あるいは従業員が「なぜ私はここで働くのか?」という「なぜ」を起点に考えを巡らせるようなコンテンツを用意し、社内報に掲載することです。いわゆるパーパス・コミュニケーションを社内報で取り組みましょう。
パーパス・コミュニケーションとは
パーパス(Purpose)とは存在意義や目的のことを指します。存在意義や目的を基軸に他者と対話するコミュニケーションをパーパス・コミュニケーションといいます。
社会ではSDGsやESG、エシカル消費やソーシャルグッドな製品やサービスに注目が集まっています。そのため社会から企業や従業員がどう映るのかを考え、ありたい姿や存在意義を基軸にコミュニケーションを行う企業が増えています。特に社内コミュニケーションで企業の存在意義(企業のパーパス)だけでなく、従業員個人の存在意義(個人のパーパス)を重視することで、パーパス・コミュニケーションを強化し、結果的に従業員のエンゲージメント向上が期待できます。
社内報に必要なコンテンツとは
社内報は社内に点在する情報を収集・編集し、発信するハブの役割を担っています。また、社内報の特性上、従業員を取材することも多く、企業のパーパスだけでなく個人のパーパスの両方を発信し、蓄積することができることが強みです。さまざまな記事を発信できる社内報のなかで、エンゲージメントを高めるために必要なコンテンツとは何かをこれからご紹介します。コンテンツは下記の通りです。
- 事業・プロジェクト紹介
- 従業員紹介
- 経営方針・事業戦略
- 外部有識者インタビュー/他社事例紹介
- 自己啓発
- 会社制度・福利厚生
- 顧客インタビュー
各コンテンツをバランスよく発信することで、従業員エンゲージメントを高めることが可能です。それぞれのコンテンツについて解説します。
事業・プロジェクト紹介
企業が取り組む事業やプロジェクトを紹介します。ただし注意点として、社内報では事業やプロジェクトの紹介を軸にした記事を書いてはいけません。多くの場合、事業やプロジェクト概要は、社外に公表されており、わざわざ社内報で繰り返す必要がないからです。あえて、概要はほどほどに、事業に取り組む従業員を取材し、記事にしてあげましょう。社内報で従業員を切り口にプロジェクトを紹介することで、会社で働くことの意義や魅力を発信でき、他の従業員にもポジティブな波及効果が期待できます。具体的には、周囲の従業員が取材された従業員をロールモデルとして認識し、「私も彼/彼女のようになりたい。この会社で活躍したい。」と士気を高めることが容易になります。ロールモデルを作ることは社内報のひとつの重要な役割であることを認識しましょう。
従業員紹介
新入社員や永年勤続表彰された従業員、社内外で表彰された従業員など、年間を通じて従業員を紹介しましょう。また、企業には裏方や縁の下の力持ちと言える従業員もたくさんいます。そのような従業員も積極的に取材し、発信してあげることで、企業全体の士気向上につながります。インタビューでは、仕事内容のほか、趣味や生活習慣、学生時代などを取材し、その人の人柄が感じられるような記事に仕上げましょう。
また、時には経営層(執行役や取締役)なども取材し、従業員が経営者を理解するきっかけを提供することも社内報の役割です。
経営方針・事業戦略
経営方針や事業戦略を伝えることは、会社のパーパスを達成するために必要なことです。従業員は日々の業務に追われ、近視眼的な視点に立って物事を考えてしまいがちです。経営者は中長期を見据えたビジョンや施策を語ることで、従業員が目指す姿を示すことができます。ここでも注意すべきことがあります。それは語りすぎないことです。社内報で同様のテーマを取り上げようとすると、文字量が増え過ぎてしまします。多くの従業員は長文を読みません。経営方針や事業戦略に共感してもらいたければ、文章で説明するだけでなく、イラストや図解を用いて、わかりやすく、世界観を伝える努力をしましょう。
外部有識者インタビュー/他社事例紹介
世界は労働環境のアップデートされるスピードが加速しています。
例えばこれまでダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion; D&I)という言葉がありますが、最近はダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(Diversity, Equity and Inclusion; DE&I)とアップデートされました。言葉の定義やアップデートの背景はこちらの記事に詳しく書かれていますので、本記事では説明を省略します。
ここで伝えたいのは、言葉やトレンドだけでなく価値観までもすぐに変化するため、私たちはその変化に遅れずについていく必要があります。社内報はその変化をいち早く捉え、従業員に伝える役割を担っています。外部有識者の知見や他社の先端事例などを紹介することで、従業員のアップデートを支援することができます。
自己啓発
トヨタ自動車の豊田章男社長は2019年の年頭あいさつにおいて、「”自分”のためにプロになれ!」と従業員に語りました。
あいさつの最後に豊田社長が述べた言葉を引用します。
皆さんは自分のために自分を磨き続けてください。トヨタの看板が無くても、外で勝負できるプロを目指してください。私たちマネージメントは、プロになり、どこでも戦える実力をつけた皆さんが、それでもトヨタで働きたい、心から思って頂ける環境を作り上げていくために努力して参ります。他人と過去は変えられませんが、自分と未来は変えられます。皆さん、一緒にトヨタの未来を創っていきましょう。頑張りましょう。
豊田章男からのメッセージ ~”自分”のためにプロになれ!~
これからは従業員の自己啓発を推奨し、個としてのプロが増える環境を社内に築かなければいけません。社内報では自己啓発に関する記事を継続して発信することが大切です。そもそも自己啓発がわからない従業員に対しては基礎知識を発信し、実際に自己啓発に取り組む社員をインタビューしても良いかもしれません。ポイントは自己啓発は人によりステージが異なるため、さまざまなステージの従業員に合った自己啓発に関する記事を執筆することです。
会社制度・福利厚生
近年、労働環境の改善や企業統治の視点から会社制度は拡充される傾向にあります。一方で、会社制度のことを知らない従業員も少なくありません。社内報では、積極的に企業の会社制度や福利厚生について発信するようにしましょう。代表的なものは健康相談窓口や、出産・育児や介護などを理由とする休職制度、法令違反や不正を通報する内部通報制度などの紹介が挙げられます。
顧客インタビュー
顧客インタビューは企業の事業を客観的に評価するきっかけになります。BtoC企業ではカスタマーサクセス部門に寄せられた顧客の声などを掲載しましょう。BtoB企業の場合は、顧客からのコメントや社会からの評価を積極的に収集・編集し、発信するようにしてください。顧客インタビューにより社会貢献を強く意識させられると、エンゲージメント向上につながります。
文字は減らし、イラストや写真を使ってビジュアルを工夫する
ここまで、社内報に掲載するコンテンツについて解説しました。最後に社内報のコンテンツ全体に共通して言えることを説明します。日本では年々読書をする人口は減り続けています。それに伴い読解力の低下を問題視している専門家も多くいます。つまり、多くの人は長文を読めないし、読まなくなっている、という事実から目を背けてはいけません。これまで紹介した内容をすべて実践しようとすると、どうしても文字量が多くなってしまいます。しかし文章が増えると読んでもらえません。そのため、社内報を制作するときは、できるだけ文字を減らし、イラストや図解などを使って記事を構成するようにしましょう。ウェブ社内報であれば、動画を活用したり、ポッドキャストとして音声配信するのもアイデアのひとつです。
終わりに
社内報は従業員エンゲージメントに影響を及ぼす重要な媒体です。そのため、戦略を持って記事を執筆することで、社内報が社内で広く読まれるようになり、エンゲージメントの向上が期待できます。creativeog[クリオグ]では社内コミュニケーションについてさまざまな記事を執筆していますので、ほかの記事もぜひご覧ください。