フィリップスミュージアム(Philips Museum)でフィリップスのUXデザインを見てきた【動画あり】

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オランダのアイントホーフェン市にあるフィリップスミュージアムに訪れた際、医療現場のUXデザインが展示されており、フィリップスのUXデザインを垣間見ることができました。この記事では、フィリップスミュージアムで展示されたフィリップスの医療現場におけるUXデザインを紹介します。

Philips Museumとは

Philips Museum(フィリップス博物館)は、オランダの電子機器メーカーであるフィリップスの歴史とイノベーションに焦点を当てた博物館で創業地のアイントフォーヘンにあります。ここでは、フィリップスの製品や技術の進化、デザインの変遷が展示され、訪問者に企業の過去から未来への洞察を提供しています。デザインとテクノロジーの融合を探求し、フィリップスの貢献に触れることができます。

https://www.philips.nl/a-w/philips-museum.html

フィリップスのUXデザイン

【事例1】小児患者向けMRI検査のガイダンスソリューション

フィリップスはMRI検査装置を製造していますが、MRI検査は多くの手順と、時には不快な環境(騒音など)が伴うものです。特に小児患者にとっては、手順が理解しづらく、騒音のある部屋で一人で過ごすというストレスのかかる経験となりがちです。フィリップスは、MRIの体験を改善するためにデジタル技術を活用したソリューションを開発しました。

Philips Pediatric Coachingは自宅や病院の待合室、MRT検査中に、小児患者が適切な準備を行えるように誘導する包括的なソリューションです。は、自宅や病院の待合室、MRI検査中に、小児患者が適切な準備を行う手助けをする包括的なソリューションです。このソリューションでは、ゲーミフィケーションとして知られるアプローチを用い、モバイルアプリケーション、模型、デジタルサイネージを活用した体験を提供します。

]コンテンツには象のオリー(Ollie)とその仲間たちが登場し、子供たちにとって親しみやすいデザインとなっています。

Ollieの映像サンプル

このソリューションを通じて、親は検査手順を理解しやすくなり、子供たちは十分な準備ができるようになり、医師は高品質な画像を撮影して診断に必要な情報を得ることができます。

【事例2】Behavioral Health(行動保健)の体験を再構築する

Behavioral Healthは馴染みのない言葉ですが、日本語では行動保健?が意味として近いと感じています。行動保健とは、精神疾患や薬物使用による障害、生活上の強いストレスによりとる行動のことを指し、行動保健ケア(行動ヘルスケア)はその状態の予防、診断、治療を指します。

The Behavioral Health Experience solutionは救急科における子どもの行動保健患者のための最適な環境を提供するソリューションです。精神保健治療を必要とする多くの若者は、地元の救急医療施設を訪れ、これが最後の手段となります。この状況は、精神科入院を意味し、患者は抑うつ症状、興奮状態、または精神疾患のまま、誰もいない部屋に数日から数週間も閉じ込められることになります。専門家のサービスを待つ間、この孤立と情緒のコントロールが難しい状況は、患者の精神的なストレスを増大させ、病状を悪化させる原因となります。フィリップスはまず人間の尊厳を守る体験を提供するために、まず患者の体験を可視化しました。これはカスタマージャーニーマップに相当します。

この斬新なソリューションは、救急科で行動保健ケアを受ける患者の体験をより人間らしいものに変えます。部屋に設置されたタッチスクリーンやプロジェクターなどを活用して、空間を変容させ、治療方法を統合することにより、救急外来の診察室は患者に合った環境に変身し、治療体験の向上に寄与します。これにより、患者は迅速に落ち着きを取り戻し、治療をより早く開始することが可能となります。

【事例3】学術視点を活用した心疾患治療センターの検討

アムステルダム周辺にある二つの大規模病院が合併し、その結果、彼らのinterventional cardiology部門は新たな心疾患治療センターとして再生します。interventional cardiologyは、冠状動脈疾患、弁膜症、構造的心疾患、末梢血管疾患、その他のさまざまな疾患に対してカテーテルを使用した診断検査と治療を提供する心臓病学の専門分野です。この記事では「カテーテル治療」と言い換えて記載します。

このセンターでは、年間7500件の処置が実施されます。フィリップスは、より優れた心臓治療のビジョンを実現し、病院スタッフを鼓舞し、病院の課題を解決するためのソリューションを開発しました。

入院治療から日帰り治療への移行

カテーテル治療は、かつては入院が必要だった心臓疾患を、現在では日帰りで治療できるようにしました。この新しい技術により、外来患者向けの待合室や休憩室は以前よりも広いスペースが必要で、カテーテル処置室の近くに配置される必要があります。この空間計画により、カテーテル処置室の効率的な利用が実現され、患者の待ち時間が短縮されます。

コラボレーションの障壁を下げる

新しい心疾患治療センターでは、医師、研究者、または学生が協力しやすい環境を構築することが重要視されています。フィリップスは、カテーテル処置室内で互いの協力と連携を促進するための環境を設計しました。学術的に価値のあるカテーテル治療において、医師だけでなく研究者や学生も同席できるような空間設計に取り組みました。さらに、カテーテル処置室の隣に観察部屋を設けることで、治療を妨げずに治療プロセスを観察できるようにしました。

スタッフの要望に合った仕事環境の構築

新しい病院の職場は、スタッフが快適でくつろげる場所であることが非常に重要です。なぜなら、優秀な医療専門家を採用することは容易ではなく、そのため新しい病院が求職者や新たなスタッフにとって魅力的である必要があるからです。フィリップスは医療従事者のニーズを明確に把握し、短時間の昼寝やストレス軽減など、新しい居住スペースの設計に焦点を当てました。

柔軟に変更できる治療空間の設計

これまで、カテーテル治療のチームは治療に応じて処置空間を柔軟に調整できる必要性を感じていました。フィリップスはこのアイデアを採用し、特定のエリアが複数の機能を兼ね備えるように計画しました。

そのほかの展示

フィリップスミュージアムでは歴史や過去の製品、ポスターなどを展示するだけでなく、デジタルサイネージを使った医療に関する展示も複数ありました。ミュージアムの様子は動画をご覧ください(6分26秒から)

アイントホーフェンへのアクセス方法について

主要な都市からのアクセス方法です。筆者はドイツのケルンからユトレヒトを経由して行きました。

アムステルダムから

アムステルダム・セントラール駅からアイントホーフェン駅までの直行列車が運行されており、所要時間は約1時間20分から1時間30分程度です。

ロッテルダムから

ロッテルダム・セントラール駅からアイントホーフェン駅までの直行列車が運行されており、所要時間は約1時間15分から1時間30分程度です。

ユトレヒトから

ユトレヒト・セントラール駅からアイントホーフェン駅までの直行列車が運行されており、所要時間は約1時間から1時間15分程度です。

ブリュッセルから

ブリュッセルからアイントホーフェンへの列車は通常アントウェルペンを経由します。所要時間は約2時間30分から3時間程度です。

パリから

パリからアムステルダム行きのユーロスター列車を利用し、アイントホーフェン駅で乗り換えることができます。所要時間はパリからアイントホーフェンまで約4時間半から5時間程度です。

ホテル

アイントホーフェンでの宿泊については、中心部に多くのホテルがあります。ホテルの検索には公式ウェブサイトを利用できます。

https://www.thisiseindhoven.com/en/see-and-do/hotels

筆者が2022年視察時に利用したホテルはCrown Hotel Eindhoven Centreです。駅から近く中心エリアのため、便利です。朝食もビュッフェ形式で豪華でした。

https://www.crownhoteleindhoven.com/en/

終わりに

医療分野におけるデザイン事例はあまり知られておらず、フィリップスの事例はとても興味深いものでした。UXデザインのプロセスは基本型のように見受けられますが、ステークホルダーを巻き込んで最後まで伴走する姿は見習わないといけません。フィリップスミュージアムは他にもさまざまな展示がされており、興味がある方はぜひ訪れてみてください。creativeog[クリオグ]では、デザインに関する記事も多数提供しています。他の記事もぜひご覧ください。

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