なぜフィンランドは世界幸福度ランキング1位なのか?【独自説】

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皆さんもそうだと思いますが、誰しもが幸福になりたいと願っています。その中で、フィンランドは2018年から2022年まで5年連続で世界幸福度ランキング1位を獲得しています。本記事ではなぜフィンランドが最も幸福な国として称えられているのかを独自に分析して解説します。

そもそも幸福とは何か

エリック・パーカー著の「残酷すぎる成功体験」に詳しく書かれていますが、ローラ・ラッシュとハワード・スティーブンの研究で幸福の測定基準として次の4つが必須要素であることが明らかになりました。

  1. 幸福感:人生から喜びと満足感を得ていること
  2. 達成感:何らかの業績でほかに抜きんでていること
  3. 存在意義:身近な人々に、ポジティブな影響を及ぼしていること
  4. 育成:自分の価値観や業績によって、誰かの未来の成功を助けていること

これらを「ビッグ・フォー」と呼び、私たちの幸福に深く寄与するものとして、意識して行動すべきだと唱えています。

この他にも「幸福とは何か」についてさまざまな見解がありますが、正解はありません。本記事ではマズローの欲求5段階説を使いながら幸福について考えます。

マズローの欲求5段階説とは、アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908~1970)が考案したもので、人間の欲求には「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現」の5段階に分けられると説いたものです。マズローの欲求5段階についてはこちらに詳細が書かれていますのでご覧ください。つまり、人間が抱く欲求5段階のすべてを満たすことができればそれは幸福であると考えられます。本記事では、欲求を満たしたときの幸福を「生きられる幸せ」「安全である幸せ」「社会とつながる幸せ」「認められる幸せ」「やりたいことができる幸せ」の5段階に分け、「幸せの5段階」と定義しました。

私たちは欲求を満たし、自己実現に向けて努力して幸せになろうとしています。しかし、なかなかうまくいきません。なぜかというと、幸せになるために自己実現目指すうちに、幸せが何なのか見失ってしまうからです。そこには幸せの落とし穴、つまり不都合な真実が隠れていることを理解しなければいけません。

人を苦しめる幸せの不都合な真実

(1)幸せは自分を客観視しないとわからない

あなたは自分自身が幸せだと思いますか?と聞かれると、皆さんは他者と比較して相対的な幸せを考えてしまうと思います。高い給与をもらっている、高い地位にいる、自慢できる家族がいる、タワマンに住んでいる、高級車に乗っている、などたくさんの基準で幸せかどうかを考えます。つまり、幸せを客観的に考えないと、自分が幸せかわからなくなっているのです。本来は幸せは主観的で感じるもので、他者と比較するものではないはずです。でも私たちはどうしても周りと比べてしまい、その結果で幸せかどうかを判断してしまいます。

(2)小さな不幸に囚われて幸せに気付かない

実は人間の脳には、嬉しいこと(ポジティブ)よりも悲しいこと(ネガティブ)に注意を向けやすく、記憶を長く残そうとする働きがあります。これを心理学で「ネガティビティ・バイアス」と言います。ネガティビティバイアスは人間の進化過程で、危険から身を守るために発達したと言われています。自分を脅かす事象について注意し、記憶を残すことで、生存確率を高められるからです。この脳の働きによって、幸せな環境にいても小さな不幸を意識してしまい、幸せであることに気付かなくなってしまうのです。

(3)幸せは麻痺する

物質的な幸せというのは長続きしないことがさまざまな研究で示されています。私たちは自分の周りにあるモノには慣れてしまうのです。高級車も乗っていればただの車になってしまいます。ある研究では、所有による幸福は3か月しか継続しないことを発見しました。生活においても慣れには気を付けなければいけません。結婚や出産といったライフイベントは幸せを感じますが、いつしか幸せは麻痺してしまいます。可愛い子供が鬱陶しくなったりするのです。

フィンランド人が考える幸せとは

私は学生時代にフィンランドに留学をしました。価値観が全く違うヨーロッパで暮らした時間はとても貴重でした。その中でも驚いたのはフィンランド人の考える幸せを体感できたことです。私の友人であるフィンランド人の多くは、「幸せとは家族や友人と時を過ごすことである」と言っています。ある日、私が夕方に大学に残って課題をやっている時に、友人が”Don’t waste your life.”(人生を無駄にするな)と言いました。彼が伝えたかったのは、授業が終わったら、友人や家族と過ごす時間を大切にしたほうが人生楽しいよ。ということです。

フィンランドの主な宗教はキリスト教です。フィンランド人の多くはキリスト教の思想に傾倒しています。聖書に登場するアダムとエバはエデンの園で神から食べてはいけないと言われた木の実(リンゴ)を食べたので、エデンの園から追放され、罰として労働を課せられました。つまり、欧米人にとって労働は罰なので、労働を短くし、家族の時間を多く取りたいと思うようです。

なぜフィンランドは世界幸福度ランキング1位なのか?

フィンランドに留学して、なぜフィンランドは世界幸福度ランキングの上位にいるのか考えていました。そして自分なりの見解を述べたいと思います。フィンランド人が幸せなのは、3点なのではないかと考えています。

  1. まずは人を信用する姿勢が根付いている
  2. フィンランドの幸せの源泉であるSISUの存在
  3. 家族や友人と自然の中で過ごす時間こそが幸せだと感じている

(1)まずは人を信用する姿勢が根付いている

フィンランド人全員に当てはまるとは思いませんが、フィンランド人は性善説で物事を考え、他人を信用する価値観を大切にしていると思います。例えば、フィンランドには国民が自由に料理を提供・販売できる「レストランデー」というイベントが2011年から2016年まで年4回開催されました。誰でもレストランを開き、グルメのお祭りに参加することができるフィンランド発のイベントですが、このイベントは性善説により成り立っています。日本では食品衛生法に則り、営業許可を受けていない人が食事を提供することが禁止されています。しかし、フィンランドは「レストランデーの衛生管理は自己責任で参加する」ということで国民に支持され、2016年からはレストランデイの開催時期に関わらず誰でも好きなときに好きな場所でレストランを開くことができるようになりました。自己責任ということは、お互いが信用しなければ成立しません。おそらくフィンランドの性善説の国民性によってレストランデーは定着したのだと思います。

性善説に基づいて行動する方がいい結果を生むことは有名なゲーム理論「囚人のジレンマ」でも証明されています。これは2人の囚人が別室である提案をされたときに、それぞれどんな対応をとるかというゲームに関する理論です。提案内容は以下のようなことです。

  • 2人とも黙秘を選べば、どちらも懲役2年
  • 1人が自白し、他方が黙秘すれば、自白した方が懲役1年、黙秘した方は懲役10年
  • 2人とも自白すれば、どちらも懲役5年

さまざまなパターンで試したところ、このゲームで最も優れた選択は「まずは相手を信じて黙秘し、相手が裏切ったら、その次は自分も裏切る」というものでした。フィンランド人は性善説で動くことが最も優れていると理解して行動しているのかもしれません。

(2)フィンランドの幸せの源泉SISU

SISUは行動志向の考え方で、「勇気、自然体、意志力、忍耐力、不屈の精神」といった意味があります。つまり折れない心を持ち、心と身体を強く保つ秘訣なのです。SISUによってフィンランド人は豊かな精神力を保持できていると感じることが多くあります。北欧は鬱になる人も多いので、どこまでSISUが浸透しているかは私にはわかりませんが、フィンランド人の幸せの源泉にはSISUが存在していると思います。

(3)家族や友人と自然の中で過ごす時間こそが幸せ

フィンランドに住む人々は、家族や友人と過ごす時間を大切にしています。夏休みはサマーコテージで家族でゆったりとした時間を過ごす彼らは、精神的な豊かさを享受していると感じました。

サマーコテージの暮らし方については別記事で解説しています。【現在執筆中】

家族や友人と過ごす時間はまさに、幸福になるための体験です。幸せを長続きするには、モノではなく体験に時間とお金を費やし、大きな満足をちょっとだけより、小さな満足をたくさん得ることが推奨されています。フィンランドの人々はこうした幸せを長続きさせる行動を自然としていると思います。
幸せを長続きさせるための方法について、Business Insiderの記事に詳しく書かれていますのでお読みください。

日本人がフィンランド人のような幸せを手に入れるには

日本人が本来持つ精神性はフィンランド人と近いものがあり、幸せが長続きしやすい国民性なのだと思います。しかし日本はモノが溢れ、いつしか幸せが物質的な豊かさによって測られてしまっています。まずは、高級車を持っている、家を買った、年収が高い、といった基準ではなく、家族や友人と過ごす時間や自然との共生で見えてくる小さな発見に幸せを見出すことが大切です。また、人を信頼し協力する関係性を築くことができれば私たちは持続する幸せを手に入れることができると思います。

終わりに

フィンランドでの暮らしは私の価値観を大きく変えました。ぜひ皆さんもフィンランドに訪れて、彼らの幸せを体験してほしいと思います。意外と些細なことで幸せを感じられることに気付いてもらえると嬉しいです。Creativeog[クリオグ]では、フィンランドに関する記事を多数執筆していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。

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