UXデザイナーがシンクタンクに転職した話

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
タイトル

これまでメーカーにデザイナーとして勤める中で、気づきや学びを言語化してきました。最近更新が滞っていました(すみません)。実は、その間に転職をしており、現在はシンクタンクでデザイナーとして勤務しています。今回はUXデザイナーがシンクタンクへ転職するまでの道のりを解説します。

シンクタンクとは何か?

シンクタンク(Think Tank)は、政策研究機関や調査研究機関のことを指し、主に政治、経済、社会、環境、技術などの分野で独立した研究を行い、提言や戦略を提供する組織です。シンクタンクは、政府、企業、非営利団体、国際機関、または市民社会の要請に応じて研究を行うことが一般的です。

主な役割

  • 政策提言:政策課題に対する調査・分析を行い、具体的な提言を行う。
  • 研究と分析:複雑な問題についてデータや情報を収集・分析し、社会的に役立つ知見を提供。
  • 教育と啓蒙:公開セミナーやフォーラムを通じて社会的な理解を促進。
  • 戦略立案:将来のトレンドを予測し、長期的な戦略を策定。

日本の主要なシンクタンク企業

1.三菱総合研究所 (MRI)

  • 設立年:1970年
  • 関連グループ:三菱グループ
  • 特徴:社会課題解決や公共政策、環境問題に強みを持ち、幅広い分野で研究と提言を行う。特に政府機関や自治体との関わりが深い。

2.日本総合研究所 (JRI)

  • 設立年:1989年
  • 関連グループ:三井住友フィナンシャルグループ
  • 特徴:経済分析、デジタル社会の構築、イノベーションの推進を主軸に活動。金融業界の視点から社会課題にアプローチ。

3.野村総合研究所 (NRI)

  • 設立年:1965年
  • 関連グループ:野村ホールディングス
  • 特徴:経営戦略やITコンサルティング、デジタルトランスフォーメーションに注力。日本で最も歴史あるシンクタンクの一つ。

4.三菱UFJリサーチ&コンサルティング (MURC)

  • 設立年:1979年(旧三和総研)
  • 関連グループ:三菱UFJフィナンシャルグループ
  • 特徴:金融政策、地域開発、環境問題に強み。シンクタンクとコンサルティングを融合した活動が特徴。

5.大和総研 (DIR)

  • 設立年:1989年
  • 関連グループ:大和証券グループ
  • 特徴:金融市場分析や経済政策の研究に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連の分野でも活動。

6.富士通総研 (FRI)

  • 設立年:1989年
  • 関連グループ:富士通グループ
  • 特徴:ICT技術を活用した社会課題の解決やデジタルトランスフォーメーションに取り組む。技術革新と公共政策を結びつける研究が得意。

7.NTTデータ経営研究所

  • 設立年:1991年
  • 関連グループ:NTTデータ
  • 特徴:デジタル社会の構築、IT活用、公共政策コンサルティングなどで活躍。AIやブロックチェーンなど先進技術の実践的研究も行う。

シンクタンクにデザイナーはいるのか?

実はシンクタンクに在籍しているデザイナーの属性や人数はほぼ公開されていません。私が転職するシンクタンクでも、手を動かせる狭義のデザインができる人材は周囲に見当たりません。例えば野村総合研究所(NRI)は2024年3月時点で7000名超の従業員を有していますが、おそらくデザイナーは二桁いれば多い方だと思います。現在はDXがトレンドとなり、一部のシンクタンクやコンサルがIT人材としてUXUIデザイナーやサービスデザイナーを青田買いしており、今後在籍するデザイナーの数は増えると見込まれます。

シンクタンクへの転職方法:3つのアプローチ

シンクタンクは専門的な知識やスキルを活かして、政策提言やコンサルティングを行うやりがいのある職場です。転職を目指す際には、以下の3つの方法が一般的です。それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を選びましょう。

1.企業へ直接応募

企業の採用ページや公募情報を通じて直接応募する方法です。

メリット

自分のペースで応募書類を準備し、直接アピールできる。求人要件や選考スケジュールが明確な場合が多い。

デメリット

採用プロセスが標準化されているため、個別の交渉や柔軟な対応は難しい場合がある。

成功のコツ

応募前に企業のビジョンやプロジェクト内容をしっかり調査し、自分の経験やスキルがどのように貢献できるかを具体的に伝える。

2.エージェント経由の応募

転職エージェントを通じて、非公開求人や適性に合ったポジションに応募する方法です。

メリット

エージェントが企業との間に立ってサポートするため、選考に向けたアドバイスや年収交渉がしやすい。非公開求人にアクセスできる可能性もある。

デメリット

エージェントによっては、必ずしもシンクタンクに特化していない場合がある。また、候補者と企業の間にエージェントが入るため、直接的なコミュニケーションが制限されることも。

成功のコツ

シンクタンク業界に詳しいエージェントを選び、希望条件やキャリアビジョンを明確に伝える。

3.リファーラル採用(縁故採用)

知人や業界ネットワークを通じて推薦を受け、転職を進める方法です。

メリット

社内の内部情報が事前に得られやすく、企業文化や職場環境をより深く理解できる。社内の人間から高い支持あるいは推薦を受けた場合は、選考過程で優遇される可能性も。

デメリット

推薦者の評価が転職者に影響を与える場合があるため、慎重に対応する必要がある。また、幅広い選択肢が限られる可能性も。

成功のコツ

業界のイベントやセミナーに参加し、現職者とのつながりを構築する。推薦を受けた際は、自分のスキルや適性がポジションに合っていることを具体的に説明できるよう準備する。

求職時にどの方法を選ぶべきか?

直接応募は、明確な目標があり、自分のスキルを的確にアピールできる人に向いています。
エージェント経由は、効率的に転職活動を進めたい、または非公開求人にアクセスしたい人に適しています。
リファーラル採用は、人脈を活用して職場環境や業務内容をしっかり把握したい人におすすめです。

シンクタンクは高い専門性が求められるため、どの方法を選ぶにせよ、自分の知識や経験を整理し、明確に伝える準備が成功の鍵となります。

筆者はリファーラル採用で入社を決めました。就職活動に手間をかけたくなかったのと、知り合いがいれば、入社後のギャップは小さいと考えたからです。

UXデザイナーがシンクタンクに入社するまでの実話

筆者が転職するまで、①カジュアル面談(2回)、②一次面接:公募部門、③二次面接:公募部門を統括する執行役員④最終面接:人事部の執行役員および公募部門の人事部門責任者、④オファー面談、の計6回の面接を行いました。そのうち①のカジュアル面談はオフィスに赴き、対面型の面談でした。残りはオンライン面談でした。また、一次面談の前にSPIを受験しました。

カジュアル面談

カジュアル面談は、正式な採用面接の前段階として企業と候補者が気軽に会話をする場を指します。名前の通り、堅苦しい面接形式ではなく、リラックスした雰囲気で行われるのが特徴です。企業文化や仕事の内容を知る場として、また候補者側が自分の適性や興味を探る場として利用されます。
筆者は2回カジュアル面談を実施しました。1度は公募する部門で働く知人と再会し、近況報告と会社および業務紹介を受けました。続いて公募部門のマネージャーと2回目のカジュアル面談を実施しました。この時は筆者がどのような業務を担っているか、なぜ転職を考えているかなど、対話しながら両者の考え方や価値観を理解する場でした。昼食も一緒に取り、終始和やかな印象を受けました。

一次面接:公募部門のマネージャー

一次面接はカジュアル面談でお会いしたマネージャーと同部門の管理監督者の方2名でした。私の素性はすでにお知らせしていますので、志望理由や退職理由など、改めてご説明するとともに、処遇について会話しました。

二次面接:公募部門を統括する執行役員

二次面接は執行役員2名との面接でした。事前に予想していた面接官ではなかっため、相手のバックグラウンドや専門性を知らず、探りつつ、面接に臨みました。この面接では、志望動機の他、前職の成果について詳細に聞かれ、会社とのマッチング度合いを精査されている様子でした。また、キャリアパスについてのディスカッションも長めに取られ、さまざまなテーマについて頭の考えを言語化することが求められました。

最終面接:人事部を統括する執行役員および人事部門責任者

最終面接では、人事部の執行役員と採用責任者と面接が組まれました。今回、デザインをバックグランドとする志願者ということで、自社に馴染めるのか、品定めするような質問が多くありました。具体的には、デザイナーとしての信念や価値観についてや、専門性が異なる社員と意見に相違があった場合、どのように対処するかなどの質問がありました。

オファー面談

内定通知書を受領した後のオファー面談では、最終面接官2名との面談でした。年収や人事制度、役職などの処遇について説明を受けた後、質疑応答といった一般的な流れでした。世間一般的に年収交渉をするならこのオファー面談が適していると聞いていましたが、度胸がなくてできませんでした。

終わりに

本記事では、筆者が転職するまでの流れをざっくりと解説しました。もしシンクタンクへの転職に興味がある方のお役に立てれば幸いです。creativeog[クリオグ]では、デザインに関する記事も多数執筆しています。他の記事もぜひご覧ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもお読みいただけます