
オランダデザインウィーク(Dutch Design Week:DDW)は、オランダのアイントホーフェン市で毎年開催される、国際的に有名なデザインの祭典です。この記事ではDDW2022で展示されていた「スーパーマーケットの未来」について解説します。
まずはDDWの様子をご覧ください

Dutch Design Weekとは
オランダデザインウィーク(Dutch Design Week:DDW)は、オランダのアイントホーフェン市で毎年開催される、国際的に有名なデザインの祭典です。このイベントは、世界中からデザイナーやクリエイティブな才能が集まり、革新的なアイデアやデザインの展示、プレゼンテーション、ディスカッションを行います。
DDWの特徴的な要素の1つは、サステナビリティやサーキュラーエコノミーなど、社会的な課題へのアプローチに重点を置いた展示も多く、持続可能な未来への洞察を提供しています。DDWについては、別記事で詳細を解説してますのでご覧ください。
スーパーマーケットの未来(2050年)
DDWで特に興味を引いたのがスーパーマーケットの未来を持続可能な社会を実現する上で再定義した展示です。World Design Embassies(WDE)のプログラムで、タイトルは「 Embassy of Food: Supermarket 2050(2050年のスーパーマーケット)」について展示していました。

30年後のスーパーマーケットの姿は誰にも予測できませんが、おそらく存在していることは確かでしょう。その時、私たちは今と同様に動物の肉や加工品を食べているでしょうか?地元で生産されていない穀物や果物をわざわざ輸入して消費しているでしょうか?
もしかしたら、動物由来ではない肉や、牛を必要としないミルク、機能性食品を食べているかもしれません。
私たちは限られた資源をどのように有効活用するかという転換点に直面しています。人々は持続可能で健康的な代替食品を求め、自分の好みに合った食品を選びたいと考えるでしょう。また、デジタルを活用した先進的なスーパーマーケットを期待しています。こうした技術革新は、私たちが知っているスーパーマーケットを劇的に変えるでしょう。
DWEは未来のスーパーマーケットに関するさまざまなシナリオを想像しました。
Embassy of Foodについて
Embassy of FoodはWDEを構成する大使館のひとつです。
World Design Embassies は、社会的課題に対する新しい視点と具体的な方向性の開発にデザインの力を活用しています。WDEはDutch Design Foundation(オランダデザイン財団)のプログラムとして、オープンな連携のもと、パートナーやデザイナーと連携のもと未来の創造に取り組んでいます。
https://www.worlddesignembassies.com/en/embassies/food-2/

AI Bert’s Fresh Place

「AI Bert’s Fresh Place」は傷ついた地球で生活する中で、お客一人ひとりにパーソナライズされた食品や料理を提案する人工知能が経営するスーパーマーケットです。AI Bertは人間の悩みを聞き、解決案を提示すると同時に、その個人レベルの事象をデータとして蓄積することで、社会的なインパクトや生態系にどれだけ影響を及ぼすのかを判断し、ユーザーに伝えます。
AI Bertに話しかけることで、ユーザーは世界を理解した上で最適なソリューションを享受できるだけでなく、自分の選択が世界にどれだけ良い影響、あるいは悪い影響を与えるかを知ることができます。


S2050

錠剤であるS2050を服用すれば、あなたの胃から余分な炭水化物、脂肪、塩分をすべて吸収します。これで、健康への悪影響を心配することなく無制限のファーストフードを楽しめます。
Microbiota To Go

Microbiota To Goは腸内細菌を助ける細菌を霧状に噴射した空間で摂取して腸を活性化させるサービスです。細菌はあらゆる場所に存在し、体内にも住んでいます。その中でも腸には約1.5kgもの細菌が住んでおり、体内の臓器で最大です。腸内細菌は免疫システムにおける重要な役割を担っています。腸内細菌ははビタミンを生成し、害のある物質を破壊し、悪玉菌を排除します。

- センサーによる生体にまつわるクイックスキャンを実施します
- キャビンの中に入り、皮膚を出すために帽子を取り、袖をめくり、靴下をおろします。
- パーソナライズされた親和性の高いバクテリアにミストが植物エキスの香りが加えられ、キャビンに放出されます。ユーザは30秒間、ゆっくりと呼吸してください。
- 健康促進の微生物は、肌、髪、呼吸器道を通じて吸収され、そしてユーザの腸にたどり着きます。

Living Lab; Landless Food リビングラボ;土壌不要の食べ物

大量生産と食品廃棄を繰り返す現在のフードシステムは新たな技術革新や流通システムの構築によって、2050年には縫い目が裂けんばかりに膨張しています。そのような時代にリビングラボは農家や科学者、物流事業者が連携して消費者の近くで食品を生産する近郊生産を試験的に始めた実験場です。ここでは、ユーザは個人的な好みの味、形、触感、栄養バランスを具現化した食べ物が生産されています。すべての食べ物がユーザの好みに合わせているため、必要十分な栄養摂取と究極の食事体験を提供することができます。
DDWでは好みに合わせた肉とスパイスの生産過程を紹介していました。
肉


- 異なる品種の微細藻類は高い細胞密度に達するまで液体培地で培養されます。
- 一滴の微細藻類の培養液が、食べ物の原料となる無味のゼリー状の物体に味を付加します。
- 保存室で食品を熟成させます。藻が成長するなかで香りが強化されます。
- 新鮮な藻をそのまま、あるいは好みのフレーバを付加してお楽しみください。
スパイス



①細胞壁のないプロトプラスト(原型となる細胞)の生成により、外部のDNAが細胞に入ることが可能になります。
②栄養分とDNAが混合され、キノコの細胞に加えられます。
③遺伝子組み換えが成功した細胞が選択され、細胞壁は自己修復します。
④望んだスパイスの香りや特徴を持つキノコが、菌糸から成長し、収穫されて食べられる状態になります。
Dutch Design Week 2023の開催情報
DDW2023概要
- 開催地: オランダ、アイントホーフェン(Eindhoven)
- 開催期間: 2023年10月21日~10月29日、11:00 – 18:00
- チケット価格: 事前購入が24.5ユーロ、現地購入が28ユーロ。11歳未満は無料。
そのほか、学生チケットや家族チケットなどパターンがあります。チケットを印刷あるいはスマートフォンに入れて、現地でリストバンドと交換。リストバンドが入場券となるため、外さない。
DDWの主要な会場
- de Trudo Toren (Strijp-S)
- Piet Hein Eek
- Stadhuisplein
- Fuutlaan
- Sectie-C
アイントホーフェンへのアクセス方法について
欧州の主要な都市からアイントホーフェンへのアクセス方法です。基本は鉄道での移動が便利です。筆者は電車でドイツのケルンからユトレヒトを経由して行きました。

アムステルダムから
アムステルダム・セントラール駅からアイントホーフェン駅までの直行列車が運行されており、所要時間は約1時間20分から1時間30分程度です。
ロッテルダムから
ロッテルダム・セントラール駅からアイントホーフェン駅までの直行列車が運行されており、所要時間は約1時間15分から1時間30分程度です。
ユトレヒトから
ユトレヒト・セントラール駅からアイントホーフェン駅までの直行列車が運行されており、所要時間は約1時間から1時間15分程度です。
ブリュッセルから
ブリュッセルからアイントホーフェンへの列車は通常アントウェルペンを経由します。所要時間は約2時間30分から3時間程度です。
パリから
パリからアムステルダム行きのユーロスター列車を利用し、アイントホーフェン駅で乗り換えることができます。所要時間はパリからアイントホーフェンまで約4時間半から5時間程度です。
アイントホーフェンのホテル
アイントホーフェンでの宿泊については、中心部に多くのホテルがあります。ホテルの検索にはアイントホーフェンの公式ウェブサイトを利用できます。
https://www.thisiseindhoven.com/en/see-and-do/hotels
筆者が2022年視察時に利用したホテルはCrown Hotel Eindhoven Centreです。
駅から近く中心エリアのため、便利です。朝食もビュッフェ形式で豪華でした。
https://www.crownhoteleindhoven.com/en/
DDW会場間の移動手段
Renault Design Rideと呼ばれる会場移動用のタクシーサービスがあります。DDWの主要な拠点を11時から18時の間を巡回しており、無料で利用することができます。また鉄道やバス、レンタルバイクなどが利用できます。(別途運賃・利用料がかかります)

終わりに
スーパーマーケットの未来について、サステナビリティやサーキュラーエコノミーを基軸に考えると、私たちの生活が変わることを示してくれたと展示でした。DDW2023でもWDEが展示するようなので、興味がある方はぜひ訪れてみてください。creativeog[クリオグ]では、サーキュラーエコノミーに関する記事も多数提供しています。他の記事もぜひご覧ください。